第94話 夕暮れと笑顔と儚さと
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
んっ! 龍太しか……見えんのやもん……」
「……やっぱり、一煉寺さんは一度はのされるべき……」
「なんでッ!?」
――その証拠に、今は輪の中に四郷もいる。
ひとしきり俺をこき下ろした後、彼女達は各々のファインプレーへと話題の花を咲かせ、夕陽を浴びるイカダの上で、互いの健闘を嬉々として語り合っていた。
散々ボールぶつけられまくったり、試合後もイジられたりと踏んだり蹴ったりな締めではあったが――今日一日の意味は、確かにあったと思う。
時折、僅かな口元の緩みから伺える――彼女の、彼女なりの「笑顔」が、その全てだ。
「正直、絶対届かんって思っとったんやけどなー……。まさか、あんな方法でやりよるとは思わんかったわ! 普通逆やない?」
「ふっ……。ワタクシ達ができないことを、平然とやってのける――それでこそ鮎子ざます! さぁ二人とも、痺れなさい! 憧れなさいッ!」
「……マニピュレートアームで、イカダの端だけ摘んでボク自身をルーズボールに届く場所まで運んだ時のこと?」
「そうそう。もしイカダが重さに耐え兼ねて折れたりなんかしたら、危なかったんじゃないかしら?」
「ちょっ……無視するんじゃないざますぅぅぅッ!」
どうやら、彼女達の話題の中心には四郷がいるらしい。輪の中に入るどころか、すっかり中心人物に大出世してしまったようだ。……約一名、逆にハブられてしまったような娘もいた気がするけど。
「……危ないとか、そういうのじゃない……。マニピュレートアームでバレーなんかしたらボールを割りかねないし、それに……」
ふと、四郷は散々けなされた傷を癒すべく、体育座りでイカダの端に佇んでいた俺の方を見つめて――
「……このイカダは壊れたりなんか、しない。一煉寺さんが作ったイカダだから……」
――そんな照れるようなことを、言ってくれた。夕暮れのせいでわかりにくくはあるが……その頬は、沈む太陽に比例するように紅い。
「い、いや、別に俺は――どわぁッ!?」
「ワガハイは!? ワガハイも作ったのだぞ!?」
すると、さっきまで傷心の俺の背中をさすり、励ましてくれた茂さんが掌を返すように俺をイカダから突き落とし、四郷に迫り出した。な、何をするんだァーッ! 許さんッ!
「……茂さんにも、感謝してる……。ありがとう……」
「そ、そうかそうか! ムッフフフ、さすが鮎子君! ワガハイのことをちゃんと理解してくれているようだね! なんなら今度ダンスパーティーにでも……ぼぶらァッ!」
「……調子に乗っちゃいけない……」
四郷としては茂さんにも感謝してるみたいだけど、相変わらず手厳しい。赤い夕陽を浴びて、鈍く輝くマニピュレーターの鉄拳が、頭部から神々しい光を放つ彼を容赦なく殴り飛した。
茂さんは俺
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ