第94話 夕暮れと笑顔と儚さと
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!」
「……梢を、いろんな女の子を、散々振り回してきた罰……!」
――なんなんだよ。俺が何をしたってんだよ!? 何か凄いドスの効いた恨み節が聞こえて来るんですけど!?
つーか、全員が黒い笑み浮かべながら、嬉々として矢継ぎ早にスパイクぶっ込んで来てるよ!? いじめいくない! こんな友情いらないィィィィッ!
……そうして、俺の覚悟すら上回るほどの狂乱に満たされた水上バレーは、日没を迎えるまで続き……。
「どぉや、龍太? 負けの言い訳やったら聞いちゃるけどぉ?」
「……なんとでも申すがよい。言い訳のしようのない惨状だったしな」
「零対九十二。点数で言えば結果はこんなところかしら? まぁ、よく頑張ったわよ。一煉寺君」
「なに人事みたいに言ってんの!? あんた途中から浮輪で遊び出したくせにッ!」
「ごめんなさいね。私、勝ち目のない戦いはしない主義なの」
「むっふっふ。無様だな一煉寺龍太。まぁ、ワガハイに意識さえあれば形勢は逆転していたであろうがな!」
「あんた試合前から脱落してただろうが!?」
――全員が寝そべっているイカダの上では、俺へのイジリ大会が勝手に開かれていたのだった。
陽の光がなりを潜め、空が暗色に変わる兆しが見えてくると、さすがに多少の肌寒さは出てくるが、そんな中でも彼女達のマシンガントークが止まる気配はない。その上、四郷に至っては自分の腕をさすってもいなかった。
「ホントにもぅ、龍太君には呆れるしかないわねぇ。ルーズボールを拾おうとして、足場を踏み外して所長のむ、胸に顔を突っ込んだり……!」
「だ、だーもー! あれは事故なんだと何度言えば……!」
「ですが! スパイクを受けて水中に沈んだ際、そこから所長のお、お尻を見ていた容疑もありましてよ!?」
「それでも僕はやってない! だいたい、そんな容疑どっから沸いて来たんだよ!?」
「だ、だって龍太様、水に沈んでもすぐに上がって来なかったのですもの……」
「九十二発も顔面スパイク決められといて、そんなすぐに起きれるかァッ!」
「……男の癇癪は見苦しい……」
ブスリ。俺の男心に、何かが突き刺さる。次いで、俺の肉体が空気を抜かれた浮輪のように崩れ落ちていく。
女性陣からの集中砲火をかい潜る中、とどめの一発として放たれる四郷の毒舌。その一撃に俺が倒れ、こうして白い抜け殻のようになってしまう流れも、今となってはお約束になってしまったらしい。
友達同士の輪の中で、共通の話題が盛り上がるように。こんな形ではあるものの、俺達の間でも、全員に通じる何かが見えて来たようだ。
「ち、ちくしょー。大体、みんなして俺だけを狙い過ぎだろッ! ドッジボールじゃねぇんだぞ! イジメカコワルイ!」
「むっ……そ、そんなん言うたってしょーがないや
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