第93話 水上バレーと友情プログラム
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真夏の陽射しを浴びつつ、蒼く澄み渡る海に体を上半身まで浸からせて、軽やかに跳ねるボールを和気藹々と打ち合う。
平和的に夏を過ごす楽しみ方において、これに勝るものはないだろう。
「えぇいっ!」
「ぼげらァッ!」
「あははっ! 救芽井さん、ナイススマッシュ!」
――こんな激しいものでさえ、なければ。
弾丸の如く閃く救芽井の強烈な一撃が、毎回のように俺の顔面へ突き刺さる。その後に浮かび上がる俺の姿は、さながら水死体のような有様になっているのだろう。
「救済の先駆者」として松霧町やアメリカでスーパーヒロインを張っていた彼女。見た目に反して、男性顔負けのレベルにまで鍛えられている――のは結構なのだが、そのパワーが並大抵のものではないという自覚を、いい加減持ってほしいもんだ。
じゃれる感覚で打ち出された一発に、何回脳みそをシェイクされたことか……。
そしてそれを知ってか知らずか、所長さんは彼女の豪腕っぷりに手を叩いて大はしゃぎしている。楽しんでるだろう、オイ。間違いなく俺の状況楽しんでるだろう!?
「はいっ、久水さんパスやでぇっ!」
「えっ、ちょっ、ひゃぁあんっ!?」
一方、この手の遊びにおける、違う意味での問題児もいらっしゃったようだ。
ブクブクと気泡を立ててノックダウン状態にあった俺が、少し間を置いてようやく顔を上げた先には、足を滑らせてボールごと水没する久水の姿があった。
水中から顔を引き抜いた瞬間に聞こえたやり取りからして、矢村が出したパスを受け損ねて、足を滑らせてしまったらしい。
……彼女がやたら運動音痴に見えるのは、他の女性陣の体力がイレギュラー過ぎるから、相対的にそう見えるだけなのだろう。多分ね。
男性顔負けの体力を持った救芽井に、俺よりすばしっこい矢村。果ては「新人類の身体」である四郷。こんな面子の中にいるのかと思えば、多少の運動音痴なんて、むしろかわいいくらい――
「ぷはっ! ――ゴボゴボッ! あっ……ぷっ……! だ、誰かッ……!」
「お、落ち着かんかい久水ッ! 足が着く深さでどうやって溺れるんやッ!?」
「し、鎮まれ! 鎮まるのだ梢! 今、兄が助け――ハプルボッカァ!」
――ってレベルではなかった様子。パニックになる余り暴れてしまい、助けようとしている矢村も久水さんも手を焼いているらしい。
茂さんに至っては、(無意識下でも)顔面に蹴り入れられてるし……。砂にでも潜って身の安全を確保した方がいいんじゃないかな。
「……ったく、なにやってんだ――か?」
イカダの前に立ち、四郷に水がなるべく掛からないように防波堤の役割を務めていた俺は、眼前の事態にやむを得ず、その場を離れようと身を傾ける。
けど、その直前で後ろにいる四郷にぐい、と肩を
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