第93話 水上バレーと友情プログラム
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いマネを何度もさせる気もない。俺は久水絡みのゴタゴタのせいで、しばらく海面を漂うばかりだったバレーボールを拾うと、ふわりと四郷の方へと放り投げた。
緩やかな放物線を描く球体は夏の日差しを受けて光り輝き、やがて彼女の懐へとすっぽり収まった。自身の両腕に降りてきたボールと、ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべているであろう俺の顔とを交互に見遣り、彼女はキョトンとした表情になる。
「……ボクの……力……? 『新人類の身体』のマニピュレートアームでバレーなんかしたら、ボールが割れちゃうけど……」
「あっははは、違う違う! んなわけねーだろ、それくらい俺でも予想付くって! 俺が言いたい『力』はそこじゃねーの!」
「……訳がわからない……。今の話の流れで、それ以外にどんな意味があるの……?」
「あるだろう? もう一つ、さ」
ここまで言っても、当のご本人は首を傾げるばかり。
どうやら、彼女には自分の「人間らしい優しさ」って「力」の概念がまるでないらしい。
だが、まぁいい。そんなことは既に予想されてること。「自分に『人に優しくできる、そういう気持ちは持ってる』って自信のあるヤツに、人を遠ざけるヤツはいない」んだから。
……これも、兄貴の受け売りだけどね。
とにかく、自分の優しさに価値を見出だせてないようなら、いやがおうでも気づかせるしかあるまい。
多少俺にリスクは掛かるし、イカダが必要な四郷から一時的に離れることにはなるが――実にシンプルな即席プランがあるしなッ!
「よーし! 今までは所長さんに審判やってもらう形だったけど、これからは全員でチーム戦とかやってみようぜ!」
俺は一旦四郷から離れると、茂さんと所長さんの間に立つような位置についた。その直後に出てきたこの発言に、救芽井が眉をひそめる。
「龍太君、全員でチーム戦って言うけど……所長も入ると奇数になるわよ? 今までは所長が審判だったから人数は拮抗してたけど……」
「心配いらん。俺と茂さんと所長で一チーム。これで十分! 男手が二人もいるからなっ!」
「あらぁ、私も選手で参加しちゃっていいの? 面白そうね!」
「ぬほー! どういうつもりか知らんが名案だぞ一煉寺龍太ッ! ――ハッ!? い、いやいや、だからワガハイには樋稟という心に決めた女性が……ゴニョゴニョ……」
俺と所長さんと茂さんでチームを組み、他の女性陣でもう一つチームを組む。その提案は、こっち側の二人にはなかなか好評のようだ。
――しかし、矢村は不服そうにこちらを睨んでいる。さっきまで同じチームで組んでた俺と離れるのが、そんなに嫌なのか?
「ちょ、ちょっと龍太。なんぼなんでも、調子乗りすぎやない? 中学ん時、バレー部の助っ人で地区大会優勝まで導いた、このアタシを敵に回す気なん
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