第93話 水上バレーと友情プログラム
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が、その状態が長く続くことはなかった。
「クッ……おい、一煉寺龍太! 生きているか!?」
「あー……うん、多分ね……」
程なくして、「救済の龍勇者」に着鎧した茂さんによって救助されたのである。着鎧甲冑で引っ張られないと抜け出せない状況って、一体どんなパワーで突っ込ませたんすか四郷さん……。
「ぷはー、死ぬかと思った! 助かったよ茂さん。……ったく、四郷さんも無茶苦茶しなさる」
「……身から出た錆……」
「錆だと!? ワガハイの純白なるこの鎧に、錆など一つもッ……!」
助かったはいいが、これ以上えっちぃ失言を掘り返されるのも辛い。俺は勝手に荒ぶる茂さんを片手で制して、別の話題を持ち掛けることにした。
「いや、あんたじゃないから! ――しっかし、さっき久水を助けた時の腕。ありゃあ、今朝とは段違いのスピードだったよな。性能披露の時は、ほんの小手調べだったってワケか?」
だがそれは、おおよそこの場には、相応しくない内容の話だった。隣にいた茂さんも、思わず「オイ」と肘を当ててくる。
それでも構わず、俺はただひたすら、彼女の解答を待った。
そして――
「……違う。あの時も本気。……速かったのは……梢だったから……」
「――はは、だろうな。わかってたよ、そんなこと」
――顔を赤らめて返ってきたその一言に、俺はフッと口元を緩ませた。
……コンペに関係しかねない、性能諸々についての話なんて、こんな時にするべきじゃない。それでも俺が彼女に話を振ったのは、ひとえに今の言葉を、本人の口から聞きたかったからだ。
冷たい機械の身体に性格が引きずられているかのように、冷淡で何かと反応の薄い四郷。そんな彼女が時折見せる、さっきの久水に向けられていたような「優しさ」がよりオープンになれば、いいきっかけになるはず。
そのためにもまず、俺はみんながいる前で、久水を大切に想う気持ちを、改めて本人から告げてほしかったのだ。それに繋がるという期待がなけりゃ、水が苦手とわかっていて、みすみすあんな無茶をやらせたりなんかしない。
四郷の放ったその一言には、一連のやり取りを見守っていた救芽井や矢村も、反応を隠すことはできなかったらしく、珍しい光景を見るように目を見開いている。
機械のように冷たい普段の彼女からは、なかなか見えない、暖かみのある人間としての一面。それを改めて目にしてしまえば、もう別次元の機械人間として見ることはできないだろう。
……あれ、また久水が顔真っ赤にして俯いてる。やっぱり面と向かって言われるのって恥ずかしいんだろうな……。
「だったら、『その力』でもっと建設的なことしてみようぜ。ほらっ!」
「ッ……?」
――さて、そこまで進展させられたからには、そんな危な
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