第93話 水上バレーと友情プログラム
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井のファインプレーである。
――しかし、四郷も随分と無茶したもんだ。水に入れないと言っておきながら、思いっ切り海水に腕一本突っ込んでるじゃねーか。
案の定、腕を引っ込めた時の彼女は、ひどく体力を消耗したかのように息を乱している。
「おい、大丈夫か?」
「はぁっ、はぁ……た、体内のコンピュータが浸水に反応して、排水機能の副作用で全身が発熱してるだけ……。少し休めば、元に戻る……」
いや、なんかすっげー湯気出てるんですけど。見てるこっちとしてはめちゃくちゃハラハラするんですけど!?
「本当に大丈夫なんだろうな……? よくそれで久水ん家の風呂に入れたな」
「……お風呂には、入ってない。湯舟の傍に座ってただけ……」
「なるほど。久水の傍にいたかったから、か?」
「……」
――うーん。地雷踏んじまったかな? なんか四郷さん、また頬膨らませてそっぽ向いちゃいましたけど。
……そういや、茂さんをブッ飛ばした時も、四郷だけ湯舟には浸かってなかったな。俺はあの時は湯気やタオルでほとんど目隠し状態だったから、ハッキリ見てはいなかったけど……確かに、彼女が風呂に入ったところは見たことがない。
「……なに、考えてるの?」
「――ッ!? いや!? 何も考えてないよ!? 風呂で四郷様のあられもない姿をチラ見した時のことなんて露も考えてないでござりますよ!?」
「……悪漢滅殺!」
「チャナガブルァッ!」
――さすが四郷様。俺の胸中など全てお見通しだったようで。つーか俺が意味不明な口調で本音を漏らしただけなんだけどね。
親友のためなら、苦手な水中にも踏み込んでいく。そんな情愛に溢れる彼女も、えっちぃことは許せないらしい。言い訳する暇も祈る時間も与えず、文字通りの鉄拳で俺を制裁してみせた。
生身の人間が「新人類の身体」にぶたれて、タダで済むはずがない。俺の体は魚雷の如く水中に突き進み、そのまま地面へとズブリ。下半身だけが海水に触れ、ジタバタすることのみを許された状態になってしまった。
頭隠して尻隠さず。この言葉をこれほどまでに体現した状況が存在しただろうか。……存在してたまるか。
「りゅ、龍太君ッ!?」
「龍太ぁ!? ちょ、四郷なにしよんっ!?」
「鮎子! 助けて頂いたのには感謝しますけど、あんまりざますっ!」
「……ボクの貞操を守るため……」
「あ、それなら仕方ないわね」
「うん、それやったらしゃあないなぁ」
「やむを得ませんわね。鮎子と龍太様の貞操が同時に失われるなど、あってはなりませんもの」
……なんだろう。ここからそう遠くないどこかで、相当ヒドイこと言われてるような気がする……。
そうしている間にも、地中に潜むチョウチンアンコウのような格好になってしまった俺だった
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