第92話 ダイナミック進水式
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配は見せなかった。四郷と久水の方は、声は出さないまでもビックリはしてるみたいだが。
「龍太様、それにお兄様……あなた達、まさか……!」
「……どうして……そこまで……」
久水は両手で口を覆い、四郷は珍しく目をしばたたく。ふふん、俺のサービス精神をナメるでないわ!
「ほら、いくぜ茂さん。出港ッ!」
「サーイエッサー!」
女の子からの視線を浴びたおかげか、茂さんもすっかりテンションが上がってノリノリなご様子。俺のペースに合わせてビーチを疾走すると、同時に両腕に力を込めて、海面へとイカダをスイングする!
「そらぁっ!」
「とぉうっ!」
着鎧甲冑を纏った人間二人にブン投げられたイカダは、青い空を虹のような放物線を描きつつ舞い、やがて凄まじい水しぶきと共に、日光に照らされた海面へと着水した。
「うおっしゃい! さて、着鎧解除――っと。よぉし四郷、これでもう言い逃れはできないな。観念して一緒に遊べー!」
「え、ちょっ――きゃああっ!?」
ぷかぷかと優雅に漂うイカダの丈夫さを確認すると、俺は流れ作業のように着鎧を解除し、次いでパラソルに隠れていた四郷を、世に云う「お姫様抱っこ」で強引に連れ出した。
何から何まで無茶苦茶過ぎるかも知れないが、背景ゆえか「引っ込み思案」を通り越してやたらと閉塞的な四郷に「人」らしく過ごしてもらうからには、これくらいのテンションで臨むくらいのことはしないと、ね。
――にしても、四郷の尋常じゃないテンパり具合が凄いな。鼻先まで真っ赤になって、口はワナワナと震えていて、視線はぐるぐると回っている。トンボでも落とそうと言うのかね、君は……。
「……あ、あ、あ……!」
「着鎧解除――む!? まっ、待て一煉寺龍太! 姫君をエスコートするのはワガハイの――」
「フッ! あんたにやらせるとは一言も言っちゃいないぜ。悔しかったら、悪い龍に捕まっちまったお姫様を助けてみろやクラァ!」
「う、裏切ったな貴様! 本当に裏切ったんですかァー! ……クッ……よかろう! ならば、ならば……! この久水茂が全身全霊を以ってして、我が超芸術的スパイクの錆にしてくれる!」
スパイクの錆って何だよ!? 踏む気か!? 兄妹揃ってソッチ系か!? つか、さっきはスパイクの的だったじゃねーか、あんた……。
ま、これで茂さんも加入することになったし、ようやく「みんなで」遊べるな。茹蛸みたいな顔になって目まで回ってるけど、四郷も遂に参加できるみたいだし。
――さぁ、人らしく遊んで、人らしく過ごそうぜ、四郷。せめて、今日くらいは、さ。
肩車で彼女をイカダに乗せて、そんな意志を視線で送る――が、当の本人はぷくっと桃色の頬を膨らませて、無言で顔を背けてしまった。ふむ、まだ友達になるには程
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