第91話 どうせなら、仲良しの方が
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ラリと即答している。
……まさか、最初から俺に働かせる気でバレーの話を持ち出したんじゃないだろうな? まぁ、この際どうでもいいか。
「よーし、じゃあ行くぞ茂さん」
「むぐふぅッ!? ど、どこへ行こうと言うのかね!?」
俺は微妙に先行していた茂さんの海パンをむんずと掴み、さっきの林の中へと連行していく。
「あ、あそこに連れ込もうというのか!? 一煉寺龍太、貴様樋稟だけでは飽き足らず、このワガハイまでもッ……!?」
「内臓まで吐きそうなジョークはその辺にしとけ。それより茂さん、あんた『救済の龍勇者』の『腕輪型着鎧装置』は持ってるか?」
「む? まぁ、護身用にとパンツに忍ばせてはいるが……」
マジかよ、駄目元で聞いてみるもんだな。つか、俺達ってなにげに発想が一致してない? ちょっと認めたくない気もするけど。
「ちょっと、龍太君なにしてるの? 早くみんなで――」
「あー悪い、ちょっと先に始めといてくれよ。すぐ用意するからさ」
「用意? なんなんや、一体?」
「あはは、まぁ、ちょっと待っとけよ」
救芽井と矢村は、俺を呼び戻そうと声を掛けて来る。が、俺は止まるつもりはない。
二人は、四郷がいないことには特に気にしている様子がない。俺がいなくなると、こうしてすぐに気づくのに。
――そうなっているのは、どこかあの娘と関係を結ぶことについて、俺以上に「溝」を感じているからなのだろう。同じ時間を共にする「友達」なら、その当人がいないことに疑問を感じないはずがない。
心のどこかで彼女を避けているから、あんな風に四郷に対して関心を持てないのだろう。事実、二人が四郷と積極的に絡んだところを、俺はあんまり見たことがない。
また、海に向かっていた女性陣の中で、所長さんを除いて唯一四郷を気にかけていたであろう久水も、どこか遠慮気味な様子を見せており、今は四郷に対して申し訳なさそうに目を伏せている。
察するに、防水対策が施されていない、という「新人類の身体」の状況を知っていたから、誘うに誘えなかったんだろうな。
……別に、ここで恩を売ってコンペティションを有利に進めよう、だなんてセコいマネは考えちゃいない。
ただ、四郷だって体が少々他人と違うくらいで、中身はちゃんとした人間なんだってことを、救芽井にも矢村にも理解して欲しい。
そして、俺自身も彼女を……もっと、ちゃんと、理解してあげたい。そうすりゃきっと……友達になってくれるさ。久水だって親友になれたんだ。同じ人間の俺達に、できないわけがない。
それに、いずれ戦うんだとしても、どっちかが負けて終わるんだとしても。……別れる時が、来るんだとしても。どうせなら、仲良しな方がいい。きっと、そうだ。
「よーし着いた。んじゃあ茂さん。
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