第90話 森の中の変態
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考の封殺を試みる。そして、スーパーヒロイン様らしからぬ悩みで、いつまでもクヨクヨしている彼女を強引にでも変えるべく、その手を掴んで林の外を目指す。
「あっ……うん……ありがとう、龍太君……」
まんざらでもないのか――そっと握り返す彼女の手は、どこと無く温もりに溢れているように感じた。
そして、間もなく出口付近というところへ――
「ん?」
「え……!?」
俺達の間に、文字通りのお邪魔虫が現れた。俺の行く手を阻むように、糸を伝って一匹の蜘蛛がひょっこり出て来たのだ。大方、木の枝から降りてきたクチだろう。
大きさは一センチ程度。俺の目と鼻の先で、ゆらゆらと左右に揺られている。そよ風ですら、このサイズの蜘蛛にとっては台風らしい。
まぁ、気に留めることはあるまい。このまま避けて外へ――
「いぃぃやぁぁあああぁあああーっ!」
――というところへ、まさかの絶叫!? 俺の傍らでけたたましい悲鳴を上げる救芽井。ちょっ……鼓膜ッ……破れるッ……!
「いや! いや! いやぁぁぁあ! 虫、虫、虫、虫ぃぃぃっ!」
「お、おいおい落ち着けって。このサイズなら別に害なんて――おわぁっ!?」
耳にキンキンと絶叫の余韻が残る中、俺はうずくまったまま震えて動かなくなってしまった救芽井の説得に掛かる。女の子だから虫は怖がるかなぁ、と思ってはいたが、まさかここまでだったとは……。――なんでここに来たんだよ。
だが、彼女が起こすハプニングはこの絶叫だけには留まらなかった。彼女は俺の腰に縋るようにしがみつき、海パンをずらしてしまったのだ。
「怖い、怖い、怖いぃぃぃ!」
「ちょっ……落ち着け救芽井! お前の方がある意味かなり恐ろしいことになってるからな!?」
しかも、シチュエーション的には悪夢の構図となっている。彼女は海パンをずり下ろした挙げ句、俺の股間に思いっ切り顔を押し付けて泣きわめいているのだ。傍から見れば完全に変態である。両方が。
なんとかこの状況を解決しなければならないのは紛れも無い事実なのだが、ここで冷静になられても後々のメンタルケアが重大な課題として残りそうな気がする。
そして――
「救芽井どしたん!? ――って龍太ぁ、どこ行っとったん? みんな心配し……て……」
「救芽井さん、いかがいたし……まし……て……」
「一煉寺龍太ァ! 貴様樋稟に一体ナニ……を……」
「あらぁ、一煉寺君って近くで見たらやっぱり逞しくってステキよねぇ。二重の意味で!」
「……もう、見て、られないっ……」
――なんで全員で来ちゃうのよ、お前ら……。
「き、き、きゃああぁああぁあ!」
「いい、い、いやあぁぁぁあん!」」
次いで、林全体へと響き渡る、矢村と久水の超絶叫。
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