第88話 ドラッヘンパイヤー現る
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した今なら、ぷにぷに角に仕込まれた空気が、いわゆる酸素ボンベとして働いてくれる。おかげで、水の中だというのに随分と生き返った気持ちになった。
ただ、このままボケッとしてたらまた水に沈められるかも知れん。三人が呆気に取られてる今のうちに、水面まで浮上させて頂くッ!
俺は水を「蹴る」というより「ゆっくりと踏む」ぐらいの気持ちで加減し、水上を目指した。
――が、それでも「救済の超機龍」の性能というのは凄まじいものらしい。普段泳ぐ時の力の三割も出していないというのに、青い空と照り付ける陽射しを拝めた瞬間、激しい水しぶきを上げてしまった。
「ぷはっ――も、もぉ龍太ぁ! いくらなんでも着鎧することないや……ろ……」
「あ、あぁすまん、やり過ぎた。――でも、お前らだって俺を水没させかけたんだからおあいこ……ん?」
それをモロにぶっかけられた矢村から、予想通りのブーイングを喰らってしまった――が、どこか様子がおかしい。
彼女は何かに気づき、次いで驚愕したかのように目を見開く。そして……みるみるうちにその愛らしい顔は、憤怒の桃色へと染まっていった。
な、なんだ……俺が一体何を……?
その変貌の意味するところを求めて、俺は視線を回し、彼女と同じく水しぶきを受けた救芽井と久水を見遣る。
そして……目を疑った。
ない。
ないのだ。
胸じゃなく、水着が。
「ぷひゃあっ! ……もー、龍太君ったら! こんなことに着鎧甲冑を使っちゃダメなんだから! 帰ったらまたお説教よ!」
「ぱはぁっ……。りゅ龍太様、急にどうされまして? 人工呼吸をして頂くにはまだ早いざましょ!」
当人達は気づいていない。いや、気づかない方がいいのか?
……ダメだ。これはきっと、気づかせるべきだろう。彼女達自身の名誉に賭けて。
水の滴る、つややかな曲線を描いた美の象徴。蒼く澄み渡る海に漂う、双丘のユートピア。
両者ともそれらが全て、生まれた姿のまま――無防備に外界へと解放されている事実に。
「龍太君、なにポケッとして――え?」
「そ、それはっ……!?」
――だが、俺が自ら手を下す必要はなかったらしい。彼女達は、彼女達だけの力で、求められた答えを導き出してくれたようだ。
俺のある部分に視線が集中し、次の瞬間に自身の胸元へ目を向ける。そして現実に直面し、条件反射で両腕ガード。この間、わずか二秒。
それまで赤裸々にさらけ出されていた野郎共のエターナルドリームは、今や噴火秒読み状態の活火山のような顔色の当人達により、完全封鎖されてしまった。全力で自分自身を抱きしめるようにして、胸を隠そうとしている彼女達の頑張りは、双丘そのものが寄せ上げられるという痛烈な二次災害を誘発させてしまっているようだ
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