第86話 四郷姉妹の光と陰
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秒で支度するからァァァァッ!」
俺はあらゆる方面から見ての身の危険を感じ、条件反射で所長さんを部屋の外まで突き飛ばす。そして自動ドアが彼女を部屋から締め出した瞬間、俺は着ていたユニフォームを迅速に脱ぎ捨て、赤いTシャツと黒いハーフパンツにサッと着替えてしまう。
あ、あぶねぇ……あの所長ッ! 救芽井達にこれ以上何を吹き込むつもりなんだッ!
着替えを済まし、出掛ける前に一言文句を付けてやろうと、俺は意気込んで自動ドアを開く――
「……あれっ?」
――が。
そのすぐ先に彼女の姿はなく、廊下に出て十メートルほど離れた場所にその後ろ姿が伺えた。
あんなところで何を――ん? あれは……何かを飲んでる?
艶やかな彼女の手に握られていたのは、茶色い瓶。そのラベルには、「興奮剤」という手書きの三文字だけが書かれていた。
ぐびぐびとその中身を飲み干していた彼女は、フゥッと一息つくと――
「……楽じゃないわね。さすがに」
――今までに聞いたことのないような、ドスの効いた低い声で、何かを呟いていた。
なんだ……? この、違和感は。
そう俺が感じた瞬間、彼女は――
「……さってとー! せっかくだし、お姉さんもスペシャルなナイスバディを披露しちゃうとしますかー!」
――再び、あのアホなテンションで聞こえよがしな叫びを上げて走り去ってしまった。
……曲がり角から姿が見えなくなる瞬間、こちらをチラリと見つめていたのは、気のせいだったのかそうでないのか。
それを確かめる方法は、俺にはない。
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