第86話 四郷姉妹の光と陰
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ったのはバレていたらしい……。
……しかし、いくら生身を傷付けないからって、脳みそをまるごと機械にブッ込むやり口を使うのは、どうにも腑に落ちない。
――「新人類の身体」は、その技術は、本当に人を守るために作られたんだろうか?
その疑念は晴れないまま、午前の発表会は終わりの時を迎えたのだった。
予定で言えば、午後は基本的には自由時間だったはず。
ロビーで一旦解散となった後、俺は見てるだけでイロイロとくたびれてしまった身体を癒そうと、自室へ引き返していた。
「ふうっ! ……『新人類の身体』、か……」
相変わらず機械の腕がうにょうにょとあちこちで動き回っているが、それに構っていられる心理的余裕もない。俺は真っすぐベッドへ身を投げて息を吹き出すと、あの光景を記憶の底から掘り返した。
……出来れば、忘れてしまいたい。それくらい自信を削いでしまうような瞬間ではあったが、目を離してはならない事実であるのも確かだった。
四郷――いや、「新人類の身体」は強い。単なる身体強化のテクノロジーとしても、レスキューシステムとしても。伊葉さんは直に戦う機会もあるかも、と言っていたが……あんなでかくてヤバい腕を、二本も引っ提げてる怪物にどうやって立ち迎えってんだか。
……いや、いくらなんでも「怪物」はないか。例えそう呼びたくなるような力は持ってても、あれは――彼女は、四郷鮎子。れっきとした、人間のはずなんだ。
だけど、それでも、あの力を本人が言っていたように「人が恐れる」可能性はすこぶる高い。そんな風になってしまうことを、彼女は望んだのか? あんな機械のような顔に、本当になりたかったのか?
――久水は、何を思って、彼女と友達になろうとしたんだ?
会議室でも不思議に思っていた事柄が、今になって再び脳裏に蘇ってきていた。それを自覚した瞬間、俺はガバッとベッドへ投げ出していた身を起こす。
……あのトラックの正面衝突を難無く食い止めた瞬間を目の当たりにしても、彼女はまるで動じていなかった。所長さんのように興奮してこそいなかったが、俺達のようにうろたえてもいなかったんだ。
見慣れた姿――だったんだろうか? あの、四郷の変わり果てたと言えば変わり果てた姿は。
「久水は……何を思った? 何を感じたら、あんなにも四郷と……」
あの凄絶な姿を思い起こし、俺は頬杖をつきながらそっと呟く。
普通なら――少なくとも俺なら、あんな姿を見せられたら多少はビビる。矢村もアレを見て以来、四郷とは若干距離を取ってしまったように見えた。元々、物静か過ぎるせいで近寄り難くもあったらしいが。
救芽井と茂さんはまだそうでもなかったが、彼女を見る目には、単純な知的好奇心の色が伺えた。久水が持っていたような、友
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