第85話 四本の腕を持つ少女
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ろうか?
そんな込み入った事情をあの娘が話してくれるとは思えないし、むやみに知りに行くような話でもないかもしれない。
だけど、それでも……納得できる理屈ぐらいは欲しい。普通の――少なくとも俺の神経に準ずれば、正気の沙汰ではないのだから。
『……テスト、開始して。お姉ちゃん……』
「オーケー。さぁ皆さん、始まりますよっ!」
俺の後ろの方から聞こえて来る、少女の囁くような小声。振り返ってみれば、所長さんはいつの間にかインカムらしき機材を装着しており、アリーナにいる四郷と連絡を取り合っているようだった。
……なんだ? これから何が始まるってん――
「わ、わああぁあぁあ! あかんあかん危ない危ないぃぃっ!」
――だぁっ!?
所長さんの威勢のいい声が示す、これから始まる何か。その実態の仮定を脳みそが弾き出すよりも早く、アリーナを凝視していた矢村が悲鳴を上げた。
慌てて俺も向き直り――思わず目を見開いてしまう。
すたすたとアリーナ中央に向かい、ただ漠然と歩くだけの四郷。そんな彼女目掛けて、別の出入口から現れた二台の大型トラックが、それぞれから見た反対方向から、挟み打ちにするかのごとく飛び出してきたのだ!
四郷がその場で立ち止まりさえすれば、猛然とフィールドを疾走するトラック同士がぶつかって終わりだろう。だが彼女は、まるでトラックに挟まれる展開を望むかのように、そのまま歩き続けていた。
つーか、四郷が仮に止まったら止まったで、トラックの運転手が……!
「ちょっ……なんなんですかアレは!? このまま双方のトラックが衝突なんてしたら……!」
「ご安心なさい。あのトラックはコンピューターで制御された無人車よ。――それに、衝突なんてあの娘がさせないわ」
「な、なんですって……!?」
俺と同じ疑問を抱いていた救芽井が、焦燥をあらわにして所長さんに迫る。
しかし、当の彼女は涼しい顔でそれを受け流すと、「そのまま見ていろ」という旨の宣告をした。――無人だって? じゃあ、四郷はあのトラックをどうするつもりなんだ?
いずれにせよ、俺はその成り行きを、固唾を飲んで見守るしかないのだろうか。
……そんな考えが過ぎり、唇を噛み締める力が強まった瞬間だった。
四郷が、動いたのは。
「……マニピュレートアーム、展開……」
――その時、俺は初めて「新人類の身体」というモノを改めて知ることになった。そのくらい、この瞬間に見た光景は、目に焼き付いて離れないものとなっていたのだ。
突如として彼女の全身から発せられた、青白い電光。バチバチと激しい音と光を引っ切り無しに放ち、俺達の視界をホワイトアウトにせんと輝きはじめていた。
「わ、あぁああぁっ!?」
「
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