第84話 食事中はマナーを守ろう
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
何もかもが機械に制御され、無機質な空間となっている俺の自室。
意識を取り戻した時に広がっていた視界には、その全てが映し出されていた。
「ん……ここって……」
頭を左右に振りながら身を起こし、俺は改めて自分が寝ていた場所を確認する。寝床らしく柔らかいことには柔らかいが、周りが周りゆえに落ち着いて寝付けないだろうと踏んでいたベッドの上で、どうやら俺は一夜を明かしていたらしい。
ベッドに付属しているデジタル時計は午前七時を指し示し、俺に起床を促す。
『真モナク朝食ノオ時間デス。所長ニエッチナイタズラヲサレタクナケレバ、起キテクダサイ』
――何やら恐ろしいことを抜かす電子音声により。つか、エッチなイタズラって……それでも研究所の所長かあの人。
朝日の一つでも差し込んでてくれれば、少しは朝を迎えた実感も出てくるんだろうけど……なにぶん、周りが機械まみれのこの光景だからなぁ。日差しなんて拝めたもんじゃない。
俺は本日最初のため息と共に、ベッドから身を起こして顔を洗おうと洗面所に向か――おうとするが、その前に頭を抱えていた。
昨日、何が起きたかをまるで思い出せない、という不安のせいだ。
……あの『三次元を二次元と錯覚する』という妙チクリンな薬を飲まされた――ってとこまでは辛うじて覚えてる。
だけど、そこから先の記憶……そう、あの視界が歪むような異常感覚に襲われた辺りから、記憶がゴソッと抜け落ちたかのように何も思い出せなくなっていたのだ。
あの後、俺は一体どうしたんだ……? あれからどうやって、俺はここまで運ばれたんだ?
その疑問と不安が、意識が戻ってしばらく経った頃から、幾度となく俺の脳内を動き回っていた。……女性陣に何もしてなければないいんだが。
脳裏をはいずり回る危険要素に後ろ髪を引かれる思いで、俺は洗面台で顔を洗う。鏡に何やらモジャモジャとうごめいているマニピュレーターが映ってるけど――これに慣れろってのか? ここの連中は。
……それから、朝食にと指定された時間まで十分を切ったというところで、俺は自室を出て食堂へ向かう。――何か胃袋に詰めれば、少しは頭も落ち着くかも知れないしな……。
ふと、その道中で見慣れた後ろ姿を見掛ける。
「おっ……救芽井! おはようさんっ!」
それが救芽井だと脳みそが理解した瞬間、俺は光の速さを超える気持ちで彼女に接近する。
こんな機械だらけの世界で朝を迎えた中で、やっと生身の人間に会えた……という心境もあるが、科学者的側面も持っている彼女なら、昨日の状況についても詳しく把握してそうだという期待の方が、声を掛けた動機としては大きかった。
そして俺は話し掛けると同時に、その小さな肩に手を置き――
「ひゃっ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ