第83話 俺の社会的生命終了のお知らせ
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な真似だけは許せませぬぞーッ!」
所長さんの云う「お膳立て」。その言葉の意図が読めずに俺が眉をひそめた瞬間、いりきたつ茂さんが俺の脇から飛び出していく――
「ただの『お膳立て』だと言っただろう。それに貴様には関係のない話だ」
――が、その突進は瀧上さんの片手一本に止められてしまった。さながらアイアンクローのように顔面全体を掌で覆われてしまった茂さんは、圧倒的体格差によるパワーに為す術もなく、モゴモゴと何かを喚きながら手足をジタバタさせている。
……おいおい、何かの冗談だろう? 仮にも「救済の龍勇者」を任されてるだけのスピードを持った茂さんの突進を、この狭い中で見切った上に「片腕」で止めるなんて。
あの久水兄妹のバカげた量の荷物を、たった一人で運びきっただけのことはある、ってことか……?
「……さて、そろそろ効果が出る頃かしら。今夜はたっぷり愉しんでね?」
そうこうしているうちに、倒れている三人を品定めするような目で見遣っていた所長さんは、意味ありげな台詞を呟いていた。一体なんだっていうんだよ……?
そして俺の方に向かって一度ウインクしたかと思うと、茂さんを捕まえたままの瀧上さんや伊葉さんを引き連れて、さっさと食堂の端まで移動してしまった。
四郷も彼女についていくように、そっと俺から離れていく。どこか申し訳なさそうにこちらを見ていたのは、せめてもの詫びだったのだろうか。
そして、彼女達が食卓のテーブルから離れ、まるで俺と救芽井達が見世物になっているかのような絵面になった時。
状況に、変化が訪れた。
「う……う〜ん……」
「きゅ、救芽井ッ!? 久水、矢村もッ!?」
悪夢から目が覚めたかのように、低く唸った声と共に、三人全員が同時に意識を回復させたのだ。
上体を起こした時の仕草からして、「眠っているのに近い状態」だったという茂さんの話は本当のようだ。三人とも、寝覚めの悪い子供のようなうめき声を上げている。
「おい三人とも! 大丈夫か? どこか具合は悪くないか!?」
俺は寝ぼけたような顔のまま、上半身だけ起こしている三人の様子を、一人ずつ見て回る。どうやら、外傷はどこにもないようだけど……。
「救芽井、大丈夫か? 俺がわかるか?」
そして、しばらく俯いていた救芽井の顔を覗き込んだ瞬間――
「……パパぁっ! 抱っこっ!」
――まばゆい彼女の笑顔と共に放たれた一言で、俺の情報処理能力がフリーズした。
「……はい?」
「パパ、抱っこ抱っこっ!」
今までに見たことがないくらい、輝かしい無邪気さを放つ救芽井の眼。そこから放たれる雰囲気は、明らかに俺が知っている彼女が成せるモノではなかった。
いや、それ以前に。なんだよ「パパ」って
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