第82話 今夜のディナーは危険な香り
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泉のような浴衣姿になっている彼は、親しげな笑みを向けて来る。が、俺は彼に関しては不審に思うところがあり、ゆえにそれを素直に受け取ることはできなかった。
……『この国の未来は君の手に掛かっている、と思って欲しいくらいなのだ』っていう口ぶりもさることながら、十年前の総理大臣が直々に出張ってたり、何か知ってる風な甲侍郎さんとも旧知だったり……。なんなんだろうか? この人は。
おまけに、すぐ傍の瀧上さんからは、やたら憎々しげに睨まれているようだった。着てる服は同じなのに、お互い全く顔も合わせていない。両方ともスンゴイ体格だから、迫力もひとしおだ……。
「……さぁ、狭くて申し訳ないんだけど、そろそろ晩御飯にしましょうか! さぁみんな、席について!」
瀧上さんと伊葉さんの間から滲み出る、どこか険悪な雰囲気。それを肌で感じ取ったのか、瀧上さんに一瞬だけ目配せした所長さんはパンと手を叩いて場を仕切り直した。
そして彼女に促される形で、救芽井達は席についていく。俺も、瀧上さんへ「恐れ」と「哀れみ」を交えたような視線を向けている四郷を気にしつつ、適当な席へと腰掛けた。
「ちょっ……龍太君!? なに四郷さんの隣に座ってるのよっ! せっかくあなたの席を確保してたのにっ!」
「ならばその席はワガハイが――びぶらッ!」
「頭が高いざますこのツッパゲールッ! ……それより龍太様ッ! ワタクシの膝の上に来てくださらないとは、どういうことでしてッ!? ま、まさかあの一晩で、ワタクシの身体に飽きたとおっしゃるのですかッ!?」
「りゅ、龍太ぁぁぁ! なんでアタシの隣に来んのやぁぁぁっ!? とうとう男に走る気やないやろなぁッ!?」
そして始まる、大ブーイング。
四郷達の不穏な空気を気にしすぎたのか、いつの間にか俺は四郷と伊葉さんに挟まれる形で席についていたらしい。それの何が気に入らなかったのか、相席に当たる女性陣からは非難轟々である。
……待て待て待て。「身体に飽きる」って、何の話だ久水。――「男に走る」って、何の趣向だ矢村ァァァッ!
「……つみつくりの末路。一煉寺さんの、人生の縮図……」
「ハッハッハ、大人気ではないか一煉寺君。これが世に云う『ハーレム』という代物かね?」
そして四郷は徹底して冷徹な視線を向け、伊葉さんは果てしなく他人事なスタンスを一貫させている。四郷研究所に纏わる人間や政界に、「助ける」というコマンドはないのかッ……!?
「ふふっ、それじゃそろそろ……いただきます!」
そんな俺達のカオスな状況を愉しむかのように微笑みつつ、所長さんは楽しげに手を合わせる。すると、天井から九つの穴がパカッと開き、そこからマニピュレーターに支えられた、晩御飯を乗せたお盆が降りてきた!
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