ロシアン巾着で運試し
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食用の巾着を出していたのを発見し、こっちにも寄越せと騒ぎだす他の艦娘達。全く、欠食児童かお前らは。俺は手早く巾着を皿に盛り付け、手渡していく。
「長波ぃ、そろそろ行きますよ!」
「あ、ちょっ、待てよ巻雲!」
店のドアを少しだけ開けて、晴れ着に着替えた巻雲が顔を覗かせた。どうやら姉妹揃って初詣にでも行くらしい。長波は慌てて椅子から降りて、バタバタと店を出ていった。
「もう、何で長波は巻雲の事を呼び捨てにするの!私お姉ちゃんなんだからね!?」
「いや、だってどう見ても巻雲は姉貴ってより妹……」
「むき〜っ!巻雲だって、巻雲だって……ふえええぇぇぇ」
「な、泣くなよ巻雲!?何かアタシが苛めたみたいに見えるだろ!?」
……何故だろう、ドアの向こうで起きてる事が脳内再生余裕なんだが。
「ていとくぅ、村雨も構って構って〜?」
一人酔っ払いがいなくなったと思ったら、新たな酔っ払いが絡んでくる。正月とかこういう行事の時の宴会は、特にも質の悪い酔い方をした奴が多い。
「お前も酔ってるなぁ、村雨」
長波が居なくなったのを見計らったように、先程まで長波が陣取っていた俺の目の前の席に村雨が移ってきた。
「ぶ〜っ、だって姉と妹に先を越されたら、やけ酒もしたくなるってもんです!」
「先を越される……って、あぁ。ケッコンの話か」
村雨が言う妹2人とは、時雨と夕立の事だ。駆逐艦らしからぬ火力を有する夕立と、大規模作戦での決定力のある時雨。戦果を期待される大鎮守府であるウチの状況を鑑みるに、その妹2人の錬度が他の駆逐艦よりも高くなるのは必然だ。何より、2人共包み隠さず俺に好意をぶつけてきてたしな。村雨もそれに追い付け追い越せの勢いで遠征や戦闘に自ら志願して参加していたが、未だ錬度が80を越えた所。ケッコンへの道程はこの辺りからがキツくなってくる。
「提督だって私の好意を知ってるクセに……イケズです」
「あのなぁ、俺ぁ村雨が無理しないかと戦々恐々としてんだぜ?」
好意は素直に受け取る質だが、無理・無茶・無謀は俺の大嫌いな3つの『無』だ……つまりは無駄だ。無理や無茶をすれば身体に余計なダメージを与えて艦娘としての寿命を縮めるし、無謀は轟沈のリスクが常に付いて回る。昼行灯と呼ばれようが、俺はそんなのはゴメンだね。
「……そっか、私の焦り過ぎか」
「そういう事だ。ほれ、これでも食って温まりな」
そう言って俺は長波の残していった巾着の皿に、新しく3つの巾着を足して村雨に出してやった。
「あら?他の人より一個多くない?」
「……内緒にしとけ。余り物で悪いが、そいつはサービスだ」
依怙贔屓はすまいとは思うものの、やっぱり自分に好意を向けてくるオンナ
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