1. 特別な日
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目指し時計の音が、ピリピリと私の耳に響いた。まぶたを開かず、手探りで音の発信源と思われる目覚まし時計を探り当て、これまた手探りでストップをかける。
目覚まし時計を投げ捨て、数分の間、布団の中でまどろんだ。……ふりをした。
「……」
意を決し、布団から上体を起こす。何かの間違いであって欲しいと祈りながら、私は投げ捨てた目覚まし時計に目をやった。時刻は朝の8時。これはいい。いつも起きている時間だから。
日付を見る。……一度目をそらし、もう一度見る。
「……やっぱ、間違ってないよね」
今日は結婚式。私のかつての仲間にして、今は大切な友達の球磨と、そして、ハルの。
あの戦いが終わり、私たちは軍を退役したあと、鎮守府から少し離れたこの街で、各々自分の住まいで暮らしている。今でも私たちは互いに連絡を取り合い、あの頃と同じように、楽しく毎日を過ごしている。
球磨とハルは、いつの間にか互いに意思表示を済ませていたらしく、その後一緒に暮らし始めた。私がそのことを知ったのは、ハルの新しいお店の開店を知らせるポストカードをもらったときだ。
開店当日、私は、大切な仲間の新しい門出を喜ぶ気持ちと、不思議な不安感を抱えながら、ハルの店の開店祝いに向かった。その日は他のみんなは忙しかったらしく、開店祝いに駆けつけたのは、私以外には、北上と隼鷹の二人だけだった。
「俺の店の名前はこれしかないよな!!」
新店舗を前にして興奮したハルは、私たちの前でそう言い切り、自分の隣に置いてある新しい看板のシーツを剥ぎ取ったのだが……その途端……
――バーバーちょもらんま鎮守府『だクマ』
ステンドグラスのようなセンスの良いカラフルな看板には、えらく力のこもった殴り書きで『だクマ』という、余計な一文字が書き加えられていた。それを見たハルは、
「……ん?」
と二度見し、目をゴシゴシとこすり、そして顔を青くした後、怒りで真っ赤にしていた。その様子はとてもほほえましく、そして大の大人の男性にこんなこと言うのも何だが、なんだかとても可愛らしい。
「ふっふっふっ……球磨が一筆書き加えておいてやったクマっ」
そんなハルの背後……店の入口のドアがカランカランと開き、この事件の容疑者、球磨が不敵に笑いながら姿を見せた。振り返り、球磨の姿を見た途端に『お前かッ!!』と怒りの咆哮を響かせたハルは、次の瞬間、その球磨の元に走りより、憤怒の形相で……でもどことなく楽しそうに、自分の恋人で将来の妻になるであろう、球磨の首根っこを掴んでいた。
「うがッ!? な、なにするクマっ!?」
「うるせー妖怪落書き女ッ!! どうすんだこれ台無しじゃねーかッ!!」
「球磨の粋な計らいで個性的になったクマッ!!
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