番外編
二人で迎える、初めての新年(2018年お正月番外編)
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する生物などいない」
「確かに食べ物でもないのにわざわざ殺すのって、よく考えたら不自然なのかもね」
不自然――デュラはその言葉に反応した。
「そうだ。不自然という言葉が一番合う。今思えば、我々が討伐されたのも自然界の掟に逆らった報いなのかもしれぬ。我々は大魔王様との契約があったとはいえ、大きな過ちを犯してしまったのだろう。
人間は私の見る限り不必要に他の動物を殺すことはない。人間が生き、我々が滅びる。この世界はごく当然の答えを出したに過ぎないのだろう」
「……」
なんと言えばよいかわからず黙ってしまったソラトの背中に対し――。
「なんで年明け早々にそんな暗い話をしてるのかなあ」
「わっ!?」
ソラトはあぐら座りのまま飛び上がった。
振り向くと、地味な灰色マントに身を包んだ人間たちが巣の入口からに中に入ってきていた。人数は四人。先頭の若い男は酒の樽を持っている。その樽の上はやや小ぶりな籠が乗っており……どうやら食べ物が入っているようだ。
元冒険者、しかも一番上のランクだったのに、ソラトは誰かが近づいてくる気配にまったく気づかなかった。
デュラのほうはというと、驚いた様子はない。だがその代わり腰を落としていた形をやめて起き上がり、意識的に姿勢を正すように、首をしっかりと起こした。
「久しぶり、ソラトくん。元気だったかな」
「久しぶり? えっと……誰だっけ?」
「ん? 俺忘れられた!? まだそんなに前の話じゃないよな? そっちのドラゴンさんはちゃんと覚えてくれているみたいなのに。ひどいなあ」
「……私は目と鼻の両方で対象を覚える。ソラトよりも気づきやすいのだと思う。その節は大変世話になった」
そう言って長い首をペコリと下げるデュラを見て、ソラトはようやく思い当たった。
「あ! 勇者さんたち?」
「やっとわかったか。遅いよ」
先頭の若い男が樽を一度置き、マントを払うように開く。
見覚えのある……いや忘れもしない、勇者の青い鎧。
「ごめんなさい。マント姿だったんで分からなくて。あのときは本当にお世話になりました」
「なんでい。まったく」
「いや、だってあのとき凄いわかりやすい色と格好だったし。勇者さんは青い鎧で、女戦士さんはピンク色の水着みたいなえっちい鎧で、僧侶さんは水色の法衣で、魔法使いさんは緑のローブ――」
ソラトは慌てて弁明したが。
「はー、色と恰好でしか覚えていないとかどうなんだ」
どうやら一層呆れられたようである。
「あれ? 何気に私だけ、けなされたか?」
「ははは。少しは姿を変えないとお忍びの旅になりませんからね。いつもはこんな格好ですよ」
「フォッフォッフォ。大丈夫じゃソラトくん。ワシは昨日のメシもよく忘れるか
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