もうちょっとだけ続くお蔵入りネタ集
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ーネストにとってそれは呪いに等しいものでもあったのですね。
前回の続き。
戦闘能力の低いフーは防具を作ることでしか周囲に貢献できない事を自分でよく理解していました。そして最終決戦で自分が本当に出来る事とは何かを考え、禁断の発想に至ります。
それは今までしてこなかった剣を打つこと。それも並大抵の素材ではオーネストもといアキレウスの戦いについていけない。ならばそれを作るための素材は究極の素材――黒竜のマテリアルに外なりません。魔物の素材を武器に転用することはよくある事ですが、それが黒竜となると人類の誰一人として経験したことのない加工となります。
フーはシユウ親方に許可をもらい、専用の工房に籠って剣を打ち始めます。しかしそれは地獄の始まりでした。黒竜の素材はそれ自体が神を殺すための呪いの集積体、つまり呪物です。近くにいるだけで人を狂わせるそれを直接手にして加工するフーの精神に想像を絶する負荷が襲い掛かります。
幻覚、幻聴、発熱。激しい神経の痛み、或いは無痛状態という異常。優しかった筈の性格も狂暴性や残虐性を頻繁に思い浮かべるようになり、食事を運んでくれるミリオンが「もうやめた方がいいんじゃない?」と本気で心配する程に身も心もボロボロになっていきます。
しかし、フーの心の底にはいくら自分が限界に近づこうが決して譲れない鋼のように重く硬い信念が横たわっていました。オーネストの為の剣を打つ。オーネストが叶えたいあらゆる我儘に最後までついて行ける、世界で最も気高く鋭い剣が欲しい。
誰かの為に想いを込めて武器を作る。シユウ・ファミリアの最も基本である精神だけを支えに、半ば自分が何をしているのか分からなくなりながらフーは命を削るような鬼気迫る勢いで剣を打ち続け――数日後、剣の完成と同時に力尽きるように倒れました。
ほぼ飲まず食わずで呪いに耐えながら職人としての全てを出し切ったフーの顔は、晴れやかでした。ちなみにこの後フーのファンたちが彼を看病して二日後には目を覚ましました。
出来上がった剣は、光を吸い込むような全く光沢がない片刃の刃。
形状はどこか歪で、どこか原始的でありながら完成された印象の造形でした。
完成した剣を受け取ったオーネスト曰く、「これを剣の形状にするには一人でバベルを建築するぐらいの精神力が必要」、「普通なら完成より前に気が狂って自殺するか、完成した後に剣の呪いにあてられて殺人鬼になる」、「フーのレベルはこれを完成させた時点で既に一つ上がっている」、「人類史に残る最強かつ最悪な武器で、多分今の時代だと俺以外には扱えない」とのこと。
「銘はどうしよう」
「付けるな。付けてはならない」
「え、何で?」
「黒竜の体の一部を凝縮して作った剣だぞ。形ある呪いと言ってい
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