第81話 今日は最後に見学会、そして……
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
四郷研究所の内部は、外から見たおどろおどろしい印象とは裏腹に、隅々まで清潔にされていた。
「――な、なぁ龍太、アタシら秘密基地にでも来とんやろか?」
「まぁ、得体の知れない点で見れば正しく『秘密基地』、だよな」
……というよりは、やたらハイテクな絵面が広がっている、と言った方が正しいのかも知れない。
純白かつ機械的な、一本道の廊下。その端々を、公園のゴミ箱のような形状で動き回る「お掃除ロボット」。そして、通路の窓越しに映る幾多のベルトコンベア。
研究所に入ってすぐに、エレベーターで地下深くまで降ろされたかと思えば、この景色である。SF映画のセットだと言ってくれた方が、まだすんなりと納得できたことだろう。
「宿泊所は地上の階に限定してあるのよ。この研究所の本領は、この地下施設」
「……施設っていうより、もうほとんど地下基地ですよね。もしかして、研究所の入口を置いてある崖も全部、中身はこういう施設なんですか?」
「崖もそうだし、そこからもっと下――つまり正真正銘の地下まで、階層は続いているわよ。下に行けば行くほど、重要な施設になっていくの」
「ワタクシも初めて知った時は、本当に驚いたざます。どうです? あなた方も驚嘆されまして?」
簡単な研究所案内をしながら、俺達一行の先頭を歩く所長さん。サラリと言ってのけてはいるけど、ここって相当常識外れな仕組みしてんだな……。久水の言う通り、今の俺達の反応には「驚嘆」という二文字がよく似合うことだろう。
あの刑務所みたいな施設が末端の最上階で、そこから崖の中身が本当の研究所になっていってる――ってわけか。つまりこの四郷研究所は、本来は崖並に高いビルみたいな、超高層ハイテク施設とも言えるんだろうか。……むちゃくちゃだ。いろいろとむちゃくちゃ過ぎる。
しかも質問してた救芽井さんは、さも納得したかのようにフムフムと頷いていらっしゃる。なにあっさりと理解しちゃってんの!? スケールのヤバさに突っ込もうとは思わないのか!
――しかし、なんでまた崖の中なんかにこんな研究所を作ったんだかな。これじゃまるで、何かに偽装してる悪役のアジトじゃないか。
この研究所のそんな不自然さに首を傾げつつ、俺は窓の外へ視線を転換する。メカの手足を思わせる部品を、流れるような作業で運んでいるベルトコンベア。その流動を眺めていると、自然にため息が出てしまった。
――こんなフザけた科学力を持った連中が作り上げた傑作が、「新人類の身体」か……。これだけのモノを作れるのなら、もうちょっと人間に優しい代物を捻り出してほしいもんだが。
……ん? 「連中」……?
「そういや所長さん、ここには何人くらいの人が住んでるんですか? 地上の階だと、掃除とか料理とかはほとんど人型のロボットがやっ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ