第81話 今日は最後に見学会、そして……
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い処置に感謝だ。
「皆さん、今日はお疲れ様。明日は午前中にちょっとだけ時間を貰うけど、それ以降は一日中お休みだから、ゆっくりしていってね。寝泊まりする部屋は、こっちにあるわ」
所長さんは俺達全員を地上まで連れ出すと、宿泊する場所に案内しようとする。
そんな彼女の、初対面の時に感じた冷たさを覆う、穏やかな口調。その裏側に何があるのかを勘繰っていた矢先――
「うわっ!?」
俺は壁のような「何か」にぶつかり、思わずよろけてしまう。所長さんに気を取られて、周りを見ていなかったせいだ。
「まぁっ!? 龍太様、お怪我はありませんの!?」
その時、一番近くにいた久水が慌てて俺の体を支えようとする。あ、あの、ダブルリーサルウェポンが当たってらっしゃるんですけど……。
「――ちょっとそこのあなた! ワタクシの旦那様にぶつかっておいて、謝罪の一言……も……」
俺がぶつかった相手に向かい、久水は語気を強める。いや、悪いのはよそ見してた俺なんだけどさ……。
だが、最初は強気な態度だった彼女の表情が、みるみる青ざめていく。まるで、虎の尾でも踏んでしまったかのように。
次第に言葉を失っていく彼女。俺はその視線の先に、何かヤバイものがあるのかと踏み、とっさに彼女を庇うように立つ。
そして、俺の眼前にそびえ立っていたのは――
「……すまなかったな。怪我はないか?」
――百九十センチはあろうかという圧倒的な体格、赤髪のショートカット。視界を闇へ飲み込むように広がる、黒い革ジャケット。そして、端正な顔立ちでありながら、その鋭い目つきは肉食獣が人の姿を借りたような、獰猛さを滲ませている。
そんな巨漢が今、俺と視線を交わしているのだ。……なるほど。何者かは知らないが、こりゃ久水も怖がるわけだ。
「がが、凱樹さん……!? もう伊葉和雅とのお話は、おお、終わりましたの……!?」
「……まぁな。奴なら今、外で夜風に当たっているところだ」
「『凱樹』さん? ってことはもしかして――」
一瞬は敵じゃないかと身構えてしまった俺だが、久水と彼の会話を通じて彼の正体を察し、少しだけ警戒を解く。向こうも俺の対応からそのことに気づいたのか、フッと口角を上げた。
「――そうだ。オレは四郷姉妹を除く唯一の住人、瀧上凱樹。所長の助手を務めている。短い間になるが、よろしくな」
そう自己紹介する彼の眼光からは、おおよそ助手の立場の人間とは思えない「殺気」が放たれているように感じた。
俺の、思い過ごしなんだろうか……?
――しかし、なんか引っ掛かるんだよな……。瀧上凱樹、四郷鮎美……どっかで聞いた覚えがあるような気が……?
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