第81話 今日は最後に見学会、そして……
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でしょう。楽しみにしててね?」
年上のお姉さんらしく、ウインクを送って宥めようとする所長さん。そんな彼女の余裕釈々といった対応に、救芽井はさらに眉を吊り上げる。うわぁ、なんだこのムード……。
「あ、あの、所長さん。そこら中でチョロチョロ動いてる『お掃除ロボット』なんですけど、あれを商品とかにしたら売れるんじゃないですか? なんでこん――この研究所のためだけに使ってるんです?」
そこで、険悪な雰囲気にも成りかねないこの状況を打破するべく、俺は所長さんに話題を持ち掛ける。――危ねぇ、「こんな山奥の研究所なんかに」とか言いそうだったわ。本音だけどさ。
……しかし実際問題、ここのハイテク技術が今まで全く世に出ていない、というのはなんとも不自然な話じゃないか。ゴミ箱みたいな形状で、ホバリングしながら動き回る「お掃除ロボット」……。値は張るかも知れないが、一家に一台は欲しいビックリメカだろう。
もし救芽井エレクトロニクスが着鎧甲冑を発表するより先に、四郷研究所がこういうロボットを発表していれば、着鎧甲冑を凌ぐインパクト――とは行かなくても、それなりに注目は集められたんじゃないだろうか。
これだけの技術があって、それをこんな地下深くにまでひた隠しにする意味が、どこにあるんだろう? ……今回の、コンペティションまで。
所長さんは俺の問いにすぐには答えず、少しだけ間を置いて口を開く。
「……完全な製品を世に送れるようになるまでは、どこにも売り出さないってこだわりがあってね。そのおかげで、あなたの言う通り、何一つ商品になっていないのよ。あの『お掃除ロボット』は、電動義肢技術の応用で作った『おもちゃ』でしかないしね」
その時の彼女の苦笑いに、俺はどことなくぎこちなさを覚えた――が、その理由を察することまでは、できなかった。
――結局、日が沈むまでの一時間ちょっとの間、俺達は「ロボットという呼び方に近しいほど、機械的な電動義肢の開発が主体になっている」という四郷研究所の見学だけに終始していた。肝心な話は、救芽井と所長さんの会話からして明日に変わるらしい。
そこまで勿体振るもんなのか? 「新人類の身体」ってのは。そりゃ、確かに「人間の脳みそをそのまんま機械に」って話は、いささかショッキング過ぎるとは思うけど……。
……でも、この人は本当にそんな代物を商品にして売り出すつもりなのか?
俺の胸中にそんな疑問がつっかえた時には、既に見学の時間は終わり、俺達は地上に上がっていた。
エレベーターから出た先では、所長さんに沈められた茂さんが、ソファーの上でタオルケットを掛けられて眠っている。いくら気品を投げ捨てたド変態だとはいえ、あのまま野ざらしにしておくわけには行かなかったのだろう。四郷研究所の手厚
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