第80話 俺を「つなぐ」、彼女の意味
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ヒロインっぷりを彷彿させる凛々しさを放ち、真っ向から所長さんを見据えた。
彼女も向こうの言い方が癪に障ったのか、微妙に目付きが鋭い。競争相手なんだから、ピリピリした空気になるのはしょうがないとは思うんだけど……この二人から感じられる威圧感、生半可じゃねぇ……。
「ムッハー! 鮎美さぁぁん! この瞬間をどれだけ待ち望――ゲボラァッ!」
「――あらあら、豚が一匹紛れ込んでたみたいよ? 車内点検には気を配った方がいいわね」
この空気が読めていなかったのか、いきなり煩悩をキックダウンさせてしまった茂さんの顔面に、ハイヒールの踵が突き刺さる。世に云う「ルパンダイブ」を試みた彼の体は、彼女に迫る瞬間に空中で静止し、直後に地べたへ墜落してしまった。
「……以前、ワタクシ達がスポンサー依頼の関係でここを訪れてから、ずっとあんな調子ざます。あのハゲルには、後ほどお仕置き百人分を堪能させてあげますわ」
「なるほど、憧れの女性ってヤツか。……あと、百人分はさすがに勘弁してやってくれ。人ん家を血で汚してはいかん」
突発的かつ無謀極まりない茂さんの特攻に困惑していた俺に、久水がそっと耳打ちしてきた。
意味不明な言動を始めた上に血達磨にまでされてしまい、色んな意味で見ていられない状況の茂さん。そんな彼を妹としてフォローする(つもりなんだと信じたい)久水の話を聞き、俺は報われなさすぎな彼の恋路を、ちょっとだけ憂いた。まぁ、救芽井と二股掛けてたバチだ、ということにしとこう。……俺が言えた義理じゃないのかもしれんが。
「梢ちゃんも、こんにちは。あらっ、そこにいるのが噂に名高い『龍太様』かしら? あなた、松霧町に行くことになった時から、その人に会えるってすごいテンションだったわよねぇ」
「あ、あ、鮎美さんっ!? それは言わない約束でしてよっ!?」
自分では言いたい放題な久水も、人に突っ込まれるとさすがにちょっぴり恥ずかしいらしい。咄嗟に俺の傍から飛びのくと、両手で顔を覆い隠してしまった。……なんか顔から湯気が出てるようにも見えたけど、まぁ気のせいだろう。
……しかし、四郷研究所にまで言い触らしてたのかよ。俺もなんか恥ずかしくなってきたわ。
「――てことは、あなたが一煉寺龍太君、で間違いないのかしら? 救芽井さんの婚約者でありながら、梢ちゃんまで虜にしてるって有名な」
すると、彼女は興味津々な視線を俺に向け、久水が離れた隙を突くかのように迫ってきた。――なんか言い方が鼻につくけど……間違いだとは言い切れない。
にしても、情報が伝わるのが早いな。俺が救芽井と婚約してるってのを、幼なじみの久水が知ったのは昨日のことなのに。
……四郷研究所なりの情報網ってトコか? こりゃあ、こっちの事情のほとんどは筒抜けって判断で間違い
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