第80話 俺を「つなぐ」、彼女の意味
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何度もここへ呼ばれているワタクシに言わせれば、あなた方の反応は滑稽に見えて仕方ありませんのよ!」
セバスチャンさんがヒィヒィと喘ぎながら、バスの中から荷物を運び出してる最中、久水は矢村にケンカを売るかの如く巨峰を張る。待て矢村! キャリーバッグを振り上げるんじゃないッ!
「あらあら、賑やかね。妬けちゃうわ」
――その時だった。冬場の湖畔のような……穏やかでありながら、どこか冷たさを感じる声が、俺の聴覚へ響いたのは。
荒ぶる矢村を羽交い締めにしている救芽井に加勢しようとしていた俺は、その声が届く瞬間、金縛りにされたかのように足を止めてしまった。いや、止められた、って感じかな……?
しかも、その感覚は俺だけではなかったらしい。暴れていた矢村も、彼女を抑えていた救芽井も、手の甲を頬に当てて「フォーッフォッフォッフォ!」と高笑いを上げていた久水も。みんな一様に、凍り付けにされたかのように、固まってしまった。
まるで吹雪を放つ雪女のように、この場の空気を一変させてしまった、その声の主。
俺達全員が、そこへ向けて各々の眼差しを集中させた先には――
「四郷研究所の所長を務める、四郷鮎美よ。かわいい救芽井エレクトロニクスの皆さん、今回はよろしくね」
――白衣に身を包む、一人の美女がこちらを見つめていた。
ここの責任者で、「四郷鮎美」……。じゃあこの人が、四郷を「新人類の身体」にした張本人か!
彼女の紺色の長髪はポニーテールに纏められ、肩から胸の辺りまでに垂れ下がっている。そして、ある少女を思わせる紅い瞳は、色とは対照的な鋭さと冷たさを漂わせていた。目鼻立ちがヴィーナス並に整っているのは、姉妹共通のようだが。
歳は……二十代後半くらい、だろうか。多少距離は離れているが、身長は俺より多少高いくらいだろう。豊満に飛び出したエベレスト(目測では救芽井以上久水以下)を除けば、身体つきの方はかなりスレンダーなようだ。
白衣の下は紫のシャツに黒いミニスカ、そしてハイヒールと、かなり久水家のメイド部隊が喜びそうな格好になっている。もしかして茂さんもか……?
それにしても、今の所長さんの言い草……。
彼女からすれば、俺達は子供にしか見えないのだろう。明らかに、ライバル視してる連中に対する態度じゃない。
それだけ自信があるのか、俺達がバカに見えてしょうがないだけなのかは知らないが……ちょっと要注意だな、この人は。
「――あなたが、四郷研究所の……? そう。私は救芽井エレクトロニクス社長令嬢にして同社の代表、救芽井樋稟です。こちらこそ今回のコンペティション、よろしくお願いします」
そこから一拍置いて、救芽井が前に進み出る。
俺を庇うように最前線へ立った彼女は、二年前のスーパー
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