第79話 ノーヴィロイド
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「うわぅッ!?」
「こっ、これはねっ! し、親戚の子供が赤ちゃんだからねっ! あ、あやすために買ったんだからねっ! そ、そ、それがたまたま、ま、紛れ込んじゃっただけなんだからねっ!?」
思わず俺が目をつぶってしまった瞬間に、彼女は素早く俺からおしゃぶりを奪い取る。そして、その直後に出て来た彼女の発言を俺が聞き取るよりも速く、自分の胸ポケットにソレを押し込んでしまった。
もはや神業レベルのスピードである。よっぽど他人に触られたくなかったんだな……。
しかし、救芽井の私物だったとは意外だ。親戚の話も、今度ゆっくり聞かせてもらおうかな?
「さ、さぁみんな、四郷研究所に出発よっ! 張り切って急ぎましょうっ!」
よほど急いでいるのか、救芽井は周りの人達に向かって、必死にまくし立てている。そんな彼女を四郷・久水・矢村の三人がジト目で見据えていたのが気になったが、まぁ、それはひとまず置いておこう。
俺達一行がバスに乗り込むと、運転手を勤めるセバスチャンさんを除く使用人――すなわちメイド部隊が、一列に並び、満面の笑みで手を振ってくれた。
……あの笑顔の意味が「あの格好、可笑しすぎー」とかだとは思いたくないな。ここは卑屈にならずに、素直に受け取っておくとしよう。
「では、行ってまいりますわ。皆さん、ワタクシが離れている間、屋敷の手入れ、お願いしますね。もし万が一、手抜かりがあれば……『ご褒美』を差し上げますわよ?」
窓から身を乗り出して、久水はどこに隠し持っていたのか、乗馬用のムチを取り出してきた。ちょ、出発前に何を!? ご乱心めされたかお嬢様!
「ご安心下さい、梢様。私ども誠心誠意を以って、今以上に見目麗しい屋敷をご覧にいれますわ。……で、でも、『ご褒美は』……欲しい、です……」
「フォッフォッフォ……いけない娘ざますね……。『ご褒美』より、『お仕置き』が必要でして?」
――あぁダメだ。これ以上は聞かない方がいい。俺の第六感が……全力でそう叫んでいるッ!
久水は嬉々としてムチを鳴らし、メイド達は全員、その音に頬を赤らめている。こんな常軌を逸した世界に留まっていたら、気が変になりそうだ……。
救芽井じゃないが、確かにこれは先を急ぎたくなってくる。
「あっ、でも……ワタクシには、龍太様の『お仕置き』が必要ですわ……」
「ぐ、ぐわあぁー! 俺をそっちに引き込まないでくれぇえー!」
恍惚たる表情で、こちらを見つめる久水。そのケモノのような眼差しに悲鳴を上げた瞬間、見兼ねたセバスチャンさんがバスを発進させてくれた。
「……えー、四郷研究所行き、発進します」
俺達を乗せたバスが、妖しい快楽に染まるメイド部隊から逃げ出すかのように、久水家から離れていく。彼女達の姿が
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