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フルメタル・アクションヒーローズ
第79話 ノーヴィロイド
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……。遠足にでも行く気でいるのか?

 ――ちなみに今後のスケジュールとしては、研究所まで久水家のバスで移動し、夕方には到着するらしい。そこで伊葉さんと合流して一泊した後、丸一日休息を挟んで、コンペティション本番に入るのだそうだ。
 なるべく最高のコンディションで、コンペティションに臨んで欲しい、というのが向こうの言い分らしい。なんともフェアな人達ではないか。コンディションだかコンペティションだかで頭が混乱しそうだけども。

 勝てるかもという期待と、負けるかもという不安。どちらも均等な大きさだ。
 だけど……もし昨日の決闘で俺が負けていたら、不安の方が確実に勝っていただろう。もっとも、その時は四郷研究所とぶつかるのは、俺じゃなくて茂さんになってたんだろうけど。……不安だな、それも。

 そんなえもいわれぬ心境のまま、俺は無駄に広い玄関から表に出る。
 茂さんの言った通り、既に俺以外は準備万端だったらしい。救芽井と矢村が、待ってましたと言わんばかりに俺の前へと駆け寄ってきた。

「龍太君、早く行きましょ! ほらほらっ!」
「もぉ、遅いで龍太っ! はよせんとっ!」
「お、おぉスマンスマン」

 二人とも笑顔だし、ちょっと遅れてきた俺の背中を押してくれてるってのは、わかるんだけど……俺以外の全員が黒いスーツ姿だから、威圧感しか感じねぇ……。
 使用人達の「プークスクス」って感じの反応に目を伏せながら、俺はそそくさと自分のリュックをバスに入れてもらった。どうやら、セバスチャンさん達の感性はまともだったらしい。哀しいほど。

「……ん?」

 その時、死にたくなるような恥ずかしさに苦心して、俯いていた俺の視界に、妙なモノが映り込んだ。
 草原の碧い茂みの中にある、手の平サイズの黄色い物体。プラスチック製のようなソレは、明らかに自然のものには見えなかった。

「なんだ……これ?」

 誰かが落としたのだろうか。そう勘繰った俺は、ひょいとその小さな物体を拾い上げてみた。

 薄っぺらいハートの形をしていて、その中央にはわっかが付いている。その裏側には、丸みを帯びた突起が出来ていた。

 この形状……まさかこれ、「おしゃぶり」か? あの、赤ちゃんが口に付けてるアレ。

 誰がこんなものを? つーか、なんでこんなところに?
 この家で、赤ちゃんって言えるくらいの小さな子供は見掛けなかったけどな……。一番小さいって言ったら四郷か矢村だけど、あの二人でも対象年齢外だろうし。

「……あ、あ、あぁあああああ〜ッ!」

 すると、矢村でも四郷でも、久水家の誰かでもなく、救芽井が悲鳴を上げた。
 彼女はまるでへそくりを見られたかのような表情で、俺に向かって猛ダッシュしてくる。その焦燥ぶりは、ただ事ではなかった。
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