第77話 ヒーローといえばユニフォーム
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したかのように俺から離れると、満面の笑みを湛えながら「ありがとう」と言い、俺は「どういたしまして」と返した。
そして、その余りにもありきたり過ぎるやり取りがお互いに可笑しくて、俺達はわけもなく笑い合っていた。
「さて、それじゃあ渡すものがあるから、ちょっと待っててね!」
すっかり上機嫌になっていた彼女は、鼻歌混じりにベッドの傍に置かれていた、肩掛けバッグへと向かう。「ルンルン」っていう擬音がピッタリ過ぎるくらい、軽快な足取りだ。
……少なくとも、今のところは地雷は踏んでないらしい。思ったより傷付いてなくて、よかった。
俺がそう胸を撫で下ろしている間に、彼女は恋人にプレゼントでも渡そうとしているかのような笑みを浮かべ、陽気に帰ってきた。ただでさえ大きい彼女の胸が、期待という言葉で三割増しくらいに膨らんでいるようにも見える。うーむ、煩悩退散。
そして、そんな彼女の両手に乗っていたのは――何かの赤い服のようだった。
「これから四郷研究所へ向かうんだから、よそ行きとして恥ずかしくない格好じゃないとダメでしょう? 矢村さんにもレディーススーツを渡してあるし、久水さん達もちゃんと準備してたみたい」
「なるほど、みんな正装だったのはそういうわけか――ってちょい待ち! コレってどう見ても普通のスーツじゃないだろ! なんで俺だけ!?」
「あなたは『救済の超機龍』を所有する資格者であり、今回のコンペティションの重要人物だもの。普通のスーツで行かせるわけないでしょう? というわけで、あなたには『救済の超機龍』の所有者にきっと相応しい、専用のユニフォームを用意したわ!」
なるほど。水泳選手がスーツじゃなくて、ジャージ姿でメダルを貰うのと同じ理屈ってわけか。……けど、ちょっと待て。
「『きっと』ってどういうことだ? まさかとは思うが――」
「だ、だってデザイナーはお父様なんだもの。私、そういう男の子のセンスってよくわかんないし……」
「ぐ、ぐわー! また甲侍郎さんかよッ!」
やっぱりか! 出来れば外れていて欲しかったけど、やっぱりなのか!
着鎧甲冑に「カッコイイから」って理由で、ツノを二本もくっ付けるあの人がデザインしてるだなんて、どうあがいても絶望じゃねーか!
た、頼む救芽井! 今からでも遅くはないッ! 俺にまともなスーツを用意してくれぇぇぇ!
「でも、あなたならスタイルもいいし、きっと似合うわよ! いいから着てみてっ!」
そんな俺の胸中など知る由もなく、救芽井は実に無責任な褒め言葉を浴びせながら、着替えを急かしてくる。あ、あーもー! 着ればいいんでしょ、着れば! もうどうにでもな〜れっ!
俺は半ば自暴自棄になりながら、寝間着に使っていた上着を脱ぎ捨てる。それを目にした救芽井が、
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