第77話 ヒーローといえばユニフォーム
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」
……などということをおっしゃった。
え? ギュッてするって……抱きしめるってこと? 救芽井を?
――いやいやいやいや! 確かに彼女は婚約者だけども! 立場的には問題ないのかも知れないけども! そんないきなり!
「あ、あ、あのですね救芽井さん、仮にも学生の身分であるお人が、不純異性交遊を誘発するような行為は慎んだ方がよろしいか……と……?」
彼女の言う通りにしていると、俺の心臓が持ちそうにない。俺は脳みそが混乱状態に陥ったまま、なんとか別の方法を探してもらおうと屁理屈を並べていた。なんか「お前が言うな」って感じがするけども。
――だが、そんな俺の空気を読まない思考回路は、彼女の手を見た瞬間にピタリと停止してしまった。
……震えていた。
彼女の手は……震えていたのだ。「何か」に怯えているかのような、不安を訴えているかのような震え。
それが目に入った時、俺はどこか既視感を覚えていた。
二年前の喫茶店での強盗事件か……? いや、確かにあの時に近い震えには見えるけど、なんだか雰囲気が違う。
じゃあ、俺が撃たれた時? いや……それも違う。
――これには……矢村の時と、近いものがある。
あの戦いが終わった後、俺は目覚めて早々、心配していた矢村に押し倒されて――抱きしめていた。
その時、泣きじゃくっていた彼女の体から微かに感じていた震え……それが今、救芽井の手にも現れているんだ。
外敵への恐怖ではなく、大切な何かを失うことへの恐れ。今の彼女の震えには、その気持ちがまざまざと現れているようだった。
――俺がここで言う通りにしなかったら、彼女は何かを無くしてしまうのだろうか。もしそれが、「俺が傍にいるという保証」なのだとしたら――
「あっ……」
――言う通りにして、証明してやるしかないだろう。俺は、ここにいる、と。
思いの外細い彼女の両肩は、俺の胸板の中にすっぽりと入り、鎖骨の辺りに彼女の顔が押し当てられた。
そして、発育の良すぎる双丘が肉壁に圧迫され、重力に逆らう方向へはみ出してくる。あててんのよ。
「……ほら、こんなとこか?」
「……うん。――ふふ、龍太君。顔、真っ赤だよ」
「う、うるせー……」
首筋の辺りに頬を当てて、救芽井は愛おしそうな視線を下方向からぶつけてくる。救芽井……これ以上、オスを刺激するのはやめたほうがいい。
それからしばらくの間、彼女は俺の胸の中で、温もりを与えつづけていた。この真夏のど真ん中に「温もり」なんてはた迷惑もいいところだが、こういう「温もり」なら、例え日干しになってでも得る価値があるのだろう。
――これのおかげなのか、彼女の震えも、なくなっていたのだから。
やがて彼女は満足
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