第77話 ヒーローといえばユニフォーム
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いたのだろうか。我に帰った俺の眼前では、スゥーッと目を細めた救芽井が、俺を冷ややかに見つめていた。あー……やっぱり、根に持ってらっしゃる……?
「もぅ、全く! 婚約者の私を差し置いて、まさか愛人を作るなんて!」
「あ、あのなぁ救芽井、俺にだっていろいろと事情ってモンが――」
「事情ってどんな事情よッ! 婚約者の私より大事な事情ってなんなのよッ! 昨夜、ベッドの上で……その、まっ、待ってたのにッ!」
く、それを言われると何も言い返せなくなるな……。まぁ確かに、婚約者ほったらかして幼なじみと一夜を過ごすなんて、浮気者もいいとこだ。
……だけど、当時の俺の状況というものも、少しは汲んでいただきたい。あの久水が長年想い続けてきたと訴えてきて、今夜が最後だからと半ば泣きつかれて……。
あの空気で「ゴメン婚約者いるからパス」とか言える奴がいたら神だぞ、そいつは。
――とは言え、それで救芽井を悲しませてしまったら世話がない。とにかく、ちゃんと謝った方がよさそうだ。寝る場所を久水に指定された以上、どうしようもなかったとは思うけどね……。
「あー……その、悪かったよ、ごめん。せっかく会えた幼なじみの頼みだったから、なかなか無下にできなくてさ」
「……もう、久水さんと寝ない?」
こうなったら、恥も外聞もあるまい。――つか、俺達以外誰もいないし。
俺は観念して、彼女に素直に頭を下げることにした。これだけで許してくれるようなことでもない、とは思うけど。
すると、向こうは俺が頭を下げてきたことに少し驚くと、やや頬を赤らめながら、顔を上げた俺を見詰めてきた。
怒りと懇願がないまぜになったような、切なげな表情。上目遣いということもあって、さながらプレゼントをねだる子供のようにも見えてくる。
久水と寝るような事態が、今後起きることがない――とは言い切れないかも知れない。あんな切実な頼み方をもう一度されて、うまく断れるかどうか……。
だが、それで救芽井を不安にさせたくもない。もし彼女が、本当に俺を想ってくれているのなら。
「……寝ないだろうな。それこそ、命でも懸けられない限りは」
そうして逡巡を繰り返した果てに出した答えが、これだった。
果たしてこれが正解なのかは、俺にもわからない。「口先でも『命懸ける』って言われたら浮気するのか」とか言われたら、それまでだろう。
だが、自分自身の気持ちが自分でもわかるくらい不安定な今の俺では、この答えが精一杯だった。救芽井……ハッキリ言えなくて、ごめん。
「そう……じゃあ、と、特別に今回だけ――」
すると彼女は何を思ったのか、はにかむような表情で俺の傍に立ち――両手を翼のように広げる。
そして、
「――ギュッてしてくれたら……許してあげる
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