第3章 束の間の休息
第76話 修羅場の朝
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た、大切な妹だ。あの娘は今までワガハイのため、懸命に仕事を手伝ってくれていた。……会いたい人に会うことも、我慢してな」
「久水が……?」
「そうだ。ワガハイに叶えられるわがままなど僅かだが……それでも、たった一人の妹の願いを蔑ろに出来るほど、ワガハイは樋稟のことに没頭できてはいない」
いつになく真剣な顔で、茂さんは俺を真っすぐと見据えている。昨日までのデンジャラス変態野郎と同一人物だとは、到底信じられないくらいに。
「今の間で、しばし悩みはしたが――それに応えうる力を持っている貴様だからこそ……梢の気持ちには、なんとしても応えて貰わねばならない。例えそれが、どのような結果を生むとしても、だ」
「茂さん……」
……茂さん、なんだかんだでやっぱり妹思いの、いいお兄さんじゃないか。こんな真摯な眼差しを向けられてしまったら、生物災害的ド変態だと思っていた自分が恥ずかしくなってくる。
反省しなくちゃ、な。
「――嫁に出す気はさらさらないが、婿として貴様が来るなら、歓迎してやらんでもないぞぉ?」
「そっか……ん?」
……あれ? なんか、だんだん声のトーンが上がって行ってる気がするな。風呂覗きの時のような、破滅的な上機嫌さが滲み出てる。こ、これはまさか――
「そしたら貴様は義理の弟! そして貴様のコネを通じて今度こそ樋稟と……ムヒヒヒヒ!」
「――台なしだァァァッ!?」
ここまでいい感じだった雰囲気が、その本音一つで完膚なきまで粉砕されてしまった。相変わらず脳髄まで樋稟一色かコイツはァッ!
「フヒヒヒヒ! さぁ一煉寺龍太、ここに婚姻届がある! 後はハンコを押すだけだぞこのヤローめ!」
「用意周到過ぎんだろ!? またキャラが崩壊してるぞあんた!」
ひらひらと一枚の紙を見せびらかしながら、茂さんは挑発するようにマヌケな踊りを披露している。おまわりさんこいつです。
「デュフフフフ! これでまた一歩野望に近づき――べぶらァッ!」
「ええかげんにせぇやぁッ!」
勝手に一人で舞い上がっていた彼の脳天に、ゴージャスな椅子が炸裂する。……矢村さん、それはやり過ぎだと思うんだ。プロレスの反則技じゃないんだから。
しかし、周りの使用人一同、主が椅子で殴られてるのに助ける気がゼロってどういうことなんだ。「当主様は一度お灸を据えられた方がよろしいかと」って感じの冷ややかな視線向けてるし……。
「全く、そんな自分勝手なことばっかりしよるけん、バチが当たるんやで」
「いや、どう見てもバチを『当ててた』と思うんだが」
「そんなことどうでもええやん! それよりずっと大事な話があるんやからっ!」
「な、なんだよっ?」
すると、今度は矢村がぴょんと俺の胸に飛び込んできた。咄嗟のことなの
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