第3章 束の間の休息
第76話 修羅場の朝
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が、そんな形式だけの男女関係など、何の意味も持ちませんのよ? 結局のところ、全てを決めるのは――深い情愛に結ばれているか否か……ざます」
久水は絡み付くかのように俺を抱きしめると、甘い吐息を耳元に掛けて来る。か、体に当たってる胸の感触も相まって、これはかなりマズい……!
しかし、いよいよ久水の心境がわからなくなってくる。昨日の夜から考えたら、こんな展開なんてどう考えてもありえないのに!
「ちょ、ちょっと待てよ久水ッ! 夕べが最後って話だったんじゃあ……!」
「そう、あの夜が『最後』でしたわ。ただ離れ離れになっていただけの、幼なじみとしての関係は――もう、終わりですの。これからワタクシ達は、一人の男と女……」
「んなああぁあ!?」
そ、そんな話を急に持ち掛けられても……! お、恐ろしい……これがセレブの世界だというのかッ!
「ゆ、許さないわよそんなことっ! 龍太君は私と結婚して救芽井龍太になるんだからっ! 人の婚約者に、当人の前で色目使うなんて正気の沙汰じゃないわよ!」
「あらあら、大事なスポンサーにそんな横柄な態度をして大丈夫ですの? ワタクシ達の助力を得られないと困るのは、どちら様でして?」
「ぐぬぬ……ひ、卑怯者っ!」
「なんとでもおっしゃいなさい。この殿方がいずれ『久水龍太』となるのも、時間の問題ですわね……」
「こ、梢……一応実権を持っているのはワガハイなのだが――ブファッ!?」
「だまらっしゃいツッパゲール!」
眼前で繰り広げられる、見るも悍ましい修羅場の連続。迂闊に立ち入れば顔面に蹴りを入れられる――という危険性は、茂さんが自らの身を以って証明してくれた。
「ちょ、ちょっと龍太もなんとか言ってやってや!」
「なんとかってなにをだよ!? ――うわっ!?」
この事態に憤慨している矢村の無茶ブリに頭を抱えた瞬間、俺の袖が後ろから急に引っ張られる。何事かと振り返れば、そこには上目遣いで俺を凝視する四郷さんが。
「……梢を泣かせたら……許さない……」
「お前も無茶苦茶言うんじゃないッ!」
あーもう、わけがわからんッ! 俺は一体どうすりゃいいんだ!?
得体の知れない展開に、状況判断がまるで追い付かない! 俺は救芽井の婚約者であって、だけど久水を泣かせたらダメだって言われて……ああああっ!
「ぐおううぅ……ん?」
その時、俺の肩にポン、という軽い感触が伝わってきた。肩を軽く叩かれた感じだ。
今度はなんだ……と訝しみつつ振り返ると、そこは包帯でグルグル巻きにされながら顔面が血だらけになっている、見るも無残な茂さんの姿があった。
「し、茂さん……?」
「……梢は、ワガハイが当主を継ぐと決めた時から、家族のためにと一心不乱にワガハイを支え続けてくれ
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