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真田十勇士
巻ノ百十八 方広寺の裏その十
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「戦にもです」
「なりかねませぬ」
「ですから」
「何としてもです」
「わかっております、ですが」
 片桐も必死で約束する、だが。
 それと共にだ、彼は二人に辛い顔で述べた。
「今大坂では誰一人としてです」
「茶々様を止められぬ」
「そう言われますか」
「それがしもですし」
 まずは自分のことを述べた。
「大野修理殿も」
「あの方は茶々様の乳母兄妹ですからな」
「そのせいですか」
「はい、修理殿は大蔵局殿のご嫡男です」
 彼女の長兄であるのだ、まだ茶々が浅井家の娘だった時のことだ。
「それ故に」
「絆が深く」
「そして忠義の心も強い故にですな」
「茶々様には逆らえぬ」
「意見も出来ませぬな」
「忠義の強さは大坂一ですが」
 しかしというのだ。
「他の者を止められましても」
「茶々様には出来ぬ」
「あの方には」
「二度の落城を経ても共におられるのです」
 一度目はその浅井家の小谷城だ、茶々はこの時に父である浅井長政と浅井家を失い兄も後に磔にされている。
 二度目は北ノ庄城だ、この時茶々の母であるお市の方は柴田勝家の妻となっていたがその柴田が秀吉に攻め滅ぼされここでも落城を経験しこの時は母の市を義父となった柴田と共に失っている。
 この二度の落城で常に大野は茶々達と共にいた、それでなのだ。
「並ではない苦楽を共にされているので」
「それだけにですな」
「絆と忠義のお心は強く」
「そしてそれが為に」
「何も申し上げられぬ」
「あの方は非常に頼もしい方です」
 考えは何かと違うことが多いが同じ豊臣の臣としてはというのだ。
「二人の弟君と共に、ですが」
「そのことが難であり」
「結果として茶々様を止められぬ」
「あの修理殿にしても」
「そうなっておりますか」
「大蔵局殿もそうでありますし」
 彼女もまた、というのだ。大野の母であり茶々の乳母である彼女も。
「そして他の女御衆も」
「誰一人としてですな」
「あの方を止められぬ」
「そしてそれが為に」
「あの方については」
「大坂で止められる者はおりませぬ」
 片桐は二人に無念の顔で述べた。
「そしてですが」
「常高院様もですな」
「そして奥方様も」
 茶々の妹である初、お江のことは正純と崇伝から出した。
「お話は出来ても」
「止められぬと」
「妹殿方であられるが故に、止められるとなると」
 片桐が思うにはだ。
「お亡くなりになられた加藤殿、浅井殿か」
「福島殿ですな」
「そして他のかつての七将のお歴々か」
「集まってお話すれば、しかし一人でとなると」
 茶々を止められる者はというと。
「それがしが知る限り真田殿しか」
「あの九度山の」
「あの御仁のみと言われるか」
「他に思い当たりませぬ
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