巻ノ百十八 方広寺の裏その九
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「お聞きになって下さいませぬ」
「そうなのか」
「ですから」
「このこともか」
「はい、茶々様に申し上げますが」
それでもというのだ。
「聞いて頂けるかどうかは」
「わからぬか」
「むしろです」
大蔵局は賑やかな宴の中で家康に暗い顔で答えた。
「そうなるかと」
「左様か、しかしな」
「このことはですか」
「何ともお願いしたい」
「迷惑を受けるのは民なので」
「だからこそな」
そこはというのだ。
「お頼み申す」
「それでは」
「そのうえであらためてお話したいこともあるしのう」
その茶々の江戸入りと豊臣家の国替えのこともやんわりと話した、直接言うことはしなかったが。
「出来ればな」
「はい、切支丹のことは」
「その様にな」
大蔵局にはこう言うだけだった、彼女についてはこれ以上言うことはせず家康も出来なかった。しかし。
片桐は大蔵局が宴の中にいる時もだ、真剣な顔で正純そして崇伝と膝を詰めて話をしていた。
正純も崇伝もだ、言葉を飾らず謀も用いず彼に真摯に話していた。
「くれぐれもです」
「切支丹だけはお止めになって頂きたい」
「片桐殿ならご存知であろう」
「あの者達が何を考え民に何をしたのかを」
「はい、本朝を乗っ取り」
片桐は秀吉子飼いだった、それだけに彼の傍にいて彼が見ていた切支丹の姿も共に見ていた。このことについては家康と同じだ。
「民を海の外に売り飛ばし」
「そして奴婢として使っていた」
「その様な恐ろしい者達だからのう」
「あの者達は本朝に入れてはなりませぬぞ」
「ましてや大阪は天下の要地」
大坂のその場所のことも話した。
「あそこから天下の各地に向かえる」
「しかも奈良、都にも近い」
「切支丹達が自由に天下を行き来すれば」
「果たしてどうなるか」
二人もそうなった場合を実際に考えそのうえで顔を青くさせている、それだけに神妙であった。
「大久保家のこともご存知であろう」
「ああしたことが幾らでも起こり天下はまた乱れますぞ」
「ですから切支丹のことはです」
「何とか取り消してもらいたい」
片桐にあくまで言うのだった。
「それはくれぐれもです」
「お願い出来ますな」
「大御所様も深く憂いておられます」
「このことについては」
「天下が乱れる元にもなる」
「ようやく泰平になったというのに」
「はい、確かにです」
片桐もそれはわかっているので二人に応えた。
「それがしもそう思いまする」
「左様ですな」
「これは天下のことです」
「大坂のことですがそれだけには留まりませぬ」
「かつて太閤様もそうされたではありませぬか」
「切支丹に対しては」
「では」
片桐は二人に約束する顔で応えた。
「このことは」
「くれぐれ
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