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フルメタル・アクションヒーローズ
第75話 俺と彼女の、甘くも苦い夏の夜
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嫌いかなんて、どうせエスパーじゃないんだからわかりっこないんだし。

 確かなのは……今、彼女が泣いてるってことだけ。

 愛も恋も関係ない。女が泣いてるなら、男が助ける。

 彼女を俺ごときが支えようとする理由なんて――それだけで結構だ。

「俺は……誰にも何も言わない。嫌なら何も言わなくていい。いくら泣いたって構わない。だから、その、頼むから安心してくれよ」

 こんな時に上手いことが言えない自分のボキャブラリーのなさには、時折、心底腹が立つ。ぬぅ、現代国語の勉強くらいはちゃんとやっとくんだった……。

 俺の下手くそな励ましを受けた久水は、背中に触れていた俺の手を払い、溢れる寸前まで涙を貯めた瞳で、俺を睨む。

 ――そして、次の瞬間。

「……どうして」

「え? お、おわっ!?」

「――どうして! どうして! どうして! どうして! どうしてぇっ!」

 何が起きたのかを脳が分析するよりも早く、俺は久水に押し倒されていた。やはり今のは地雷だったのか……!?
 彼女をフォローするはずが、かえって傷つけてしまったのかも知れない。その後悔の念が俺を飲み込もうと、波となって襲い掛かってきた。

 だが――

「どうして今になって……今になって! ワタクシの前に現れるざますッ! 今になって、優しくするざますッ!」
「えっ……?」

 ――彼女の怒りのベクトルは、俺が予期していたものからは大きく外れていた。

「着鎧甲冑の理念を守るために戦って! 救芽井さんを手に入れて! 守るべき大切な人を見つけたはずなのに! 昔の存在に過ぎないワタクシのことなんて、とうに忘れ去るべきなのにっ! どうして! どうしてあなたは! ワタクシを覚えているざますかっ!? どうして、どうして、どうしてワタクシに! あの日の気持ち、思い出させるざますかっ!」

 彼女の双丘は慟哭に比例して激しく揺れ、瞳からは決壊したダムのごとく溢れ出す雫が、俺の顔に降り注いでいた。
 俺の上に馬乗りになった姿勢で、久水はひたすら泣き、罵倒し、叫ぶ。胸倉を掴む彼女の手が震えているのは多分――いや、間違いなく気のせいではない。

 ――四郷の話は、確実に現実味を帯びて来ている。なんでもない男を相手に、ここまで大粒の涙を見せられるほど、彼女は気弱ではないはず。

 小さい頃、彼女は俺に会うまで独りだった。それでも、それらしいところなんて、これっぽっちも俺に見せていなかったんだ。そんな気丈な彼女が今、俺の眼前で大泣きしている。

 ……それくらい、今の俺はアテにされてしまっている、ということだ。何の取り柄もないはずの、この俺が。

「――あなたと離れることが決まって、あなたの前であんなに泣いた時……もうワタクシ、泣かないと決
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