第75話 俺と彼女の、甘くも苦い夏の夜
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が聞こえて来る。
「な、なぁおい、大丈夫かよ? なんか俺に出来ることある?」
恐る恐る肩に手を置いて尋ねてみるが、返事はない。そこから伝わる体の震えを察してしまうと、触れているだけで、なんだか申し訳なくなってしまう。四郷の話を聞いた直後とあっては、なおさらだ。
それからすぐに気づいたことだが、やっぱりテレビで流れているのは、全部救芽井エレクトロニクスの関連映像だ。連続でそればかりが流れているところを見るに、大方ビデオで編集したものを再生しているんだろう。
なぜそんなものを、電気も付けずに見つづけていたのかはわからないが……気掛かりが一つある。
それは、流れている映像が全て「救芽井が出演している」ものだった、というところだ。CMにせよプロモーション映像にせよ発表会にせよ、救芽井が映っている時のモノしか再生されていないのだ。
この別荘に来る前の特訓中、俺は部室で何度か救芽井にこういう映像を見せられたことがあり(将来のための社会勉強だそうで)、その時は救芽井が映っていないバージョンのCMや、彼女が参加していない場での発表会などが上映されていた(自分が出ているところを、本人がいる場で見られるのは恥ずかしいんだとか)。
つまり、救芽井エレクトロニクス関連の映像には彼女が出演していないものもある、ということだ。久水が今見ているビデオは、その中から救芽井が出ている映像だけを切り抜いているように伺える。
あの性欲を持て余しまくってる茂さんならまだわかる(それはそれで困るが)けど、あんなに救芽井とケンカしてた久水が、彼女の出演してるビデオを見て泣いているってのは、どういう状況だってんだ?
「ひぐ、うぐっ……で、出ていくざます! ここから、出ていくざますっ!」
「――悪いが、そうは行かない。なにせ、今日はここが俺の寝床なんだから」
「ッ! そ、それはっ……!」
泣いているところを見られていたたまれなくなったのか、俺を追い出そうとする久水。俺はそれを、正論を以って制した。
いつもなら「わ、わかりました〜」って退散してもいい状況だが、今回ばかりはそうはいかない。四郷にあんなこと言われて、彼女を見過ごすなんて出来ない!
「メイドさんから聞いた。ここが俺の寝床だっていう指定は、お前が出したんだろ?」
「う、う〜っ……!」
「……そんな『追い詰められた』みたいな顔すんなよ。俺は敵じゃないだろ?」
俺は彼女の背中をさすりながら、子供をあやすように優しく話し掛けていく。下手に刺激しないよう、俺も超必死だ。
「久水が俺を愛してる」……か。それがホントかどうかなんてわからないし、ずっとその辺りが気掛かりで仕方なかったけど……。
――もう、そんなのどうでもいい。
久水が俺のことを好きか
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