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フルメタル・アクションヒーローズ
第74話 四郷先生の恋愛教室
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「……それは聞いてる。救芽井さんが話してくれた。一煉寺さんがどれだけ必死に戦って、あの人を守ろうとしたのか。それをただ、切実に語ってくれた……」
「きゅ、救芽井が?」

 そういや、茂さんが救芽井から俺の事情を聞いた、って言ってたな。久水もそうだったのか……。

「……ボクはその話を聞いて、ちょっとホッとしてる。それくらいしっかりした人なら、梢を幸せにしてくれる、って……」
「そ、そりゃどーも」
「……けど、梢は複雑だったはず。一煉寺さんが昔のままの優しさを持った上で、逞しくなってくれてはいても、それが向けられた先は自分じゃなかったんだから……」
「あ……」
「……一煉寺さんが救芽井さんの『婚約者』になってる以上、無理に梢の隣に行けだなんて、ボクには言えない。だけど、梢は一煉寺さんを愛してる分だけ、苦しんでる。それだけは伝えたくて、ここに来てもらったの……」

 言われた直後には真っ赤になっていたらしい俺の顔が、次第に熱を失っていくのがわかる。
 時間を置いて落ち着いて来た――というわけではなさそうだ。それは、当人である俺だからこそわかること。

 ――青ざめているんだ。俺のことを気にかけていた上、俺のせいで苦しんでいる、という話に。
 どういうことなんだ。俺は、フラれたはずじゃ、なかったのか? あの時泣いたのは、一体……。

 小さい頃、好きだった女の子が、今も自分を想っていた。これほど嬉しい話はないはずなのに、胸中には不安の色しかなかった。
 いっそ、質の悪い冗談だと笑い飛ばせたなら、どれだけ楽になるだろう。だが、それだけはきっと、許されない。
 「これ以上、友を苦しめるのは許さない」と言わんばかりの真剣な眼差しで、俺を見据える四郷の瞳を見てしまったなら。

 だが、俺はどうすればいい? 仮にも、救芽井と「婚約」している俺は。
 常識で考えたら百万歩譲っても有り得ない話だが、久水が本当に俺のことを好きだったのだとしても、立場上、俺にしてやれることなんて何もないはずだ。

「……ボクが話したいことは、これだけ。他に聞きたいことがないなら、早く梢のところに戻ってあげて……」
「――わかったよ」

 ……それでも、逃げ出すことだけはできないらしい。どんな結果になるとしても、向き合うことだけは必至になる。
 そうでなくては、四郷にどんな目に逢わされるかわからないからな。「人が恐がる力」ってヤツで、さ。

 俺はひらひらと手を振りながら、部屋を出ようとドアに向かう。そして扉を開いて、外に出る時。
 ……ふと振り返った俺は、心配そうな顔をしていた四郷に向け、ニッと笑いかけていた。友人を案じる彼女を、不安にさせるのも忍びないんで、ね。

「――わざわざ、ありがとうな。気づかせてくれてよ。お前に会えて、ラ
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