第73話 長電話は近所迷惑
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」
『うむ。――礼を言うべきは、私達だがな』
それから、俺は翌日以降のプログラムについて聞かされた。
まず、久水家を出発して山の裏側に抜けて、海に出る。その海沿いの道を通った先に、海に近い森に隣接した四郷研究所がある。
そこに滞在しながら、四郷研究所の製品と一定の競争科目で対決し、どちらがより優秀かを競う。……ザッと説明すると、こんなところのようだ。
ちなみに、救芽井は街を出発する前の頃から、伊葉さんに直接プログラムの説明を受けていたらしい。さっきの伊葉さんからの連絡は、プログラムの確認を取りたかったというだけで、俺がいちいち解説する必要はないんだとのこと。
『その競争科目には、それぞれの最高傑作で臨まなければならない。そうしなければ、製品としてのポテンシャルが証明しきれないからな』
「現時点でのソレが『救済の超機龍』であり、それを扱えるのが俺だけ。だから俺が行くしかない、ってわけですな」
『……済まないな。本来ならば救芽井家だけで解決しなければならない仕事なのだが、まさか君のために造ったというだけだった最新型が、コンペティションに動員される事態になるとは我々も想定していなかったのだ』
「いいですよ。必要とされてるなら、必要とされてることをするだけです。それに、俺は義理の息子なんでしょ? もうよそ者みたいに扱うのは、やめましょうや」
――そう。ここまで来て、今さら後戻りなんて出来ない。そんな空気じゃないし、引き返したりなんかしたら、それまで自分のやってきたことを、全て自分で無駄にしてしまうことになる。
いろいろと不可解なままなのも当然嫌だし不安だが、そんな後味の悪い展開も、俺は御免被る。何かと嫌がってばかりでワガママな奴みたいだけど、それが「俺」なんだからしょうがない。
『……ありがとう、恩に着る。私達に出来ることなら、如何なることでも成し遂げると、約束しよう』
「――たはは、どういたしまして、です」
それからしばらく、甲侍郎さんやゴロマルさんと取り留めのない世間話を交えて、俺は通話を終了した。
終わり際に、「何があっても、娘を守り抜いて欲しい。君の力なら、奇跡を再び起こしてくれると信じている」なんて仰々しいエールを送ってきたところを見るに、やはり今回のコンペティションには、俺の知らない何かがあるのだろう。
それが何なのかは、実際に行かなければ、多分わかりようがない。いくらこの場で考えても、真っ当な答えなんて出てくるはずがないのだから。
「……やれやれ。結局、悩むだけ無駄ってことですかい」
コンペティションや大人達の言うことを気にするのは、確かにやめるべきなのかも知れない。考えたところで、子供の思考が大人のソレに追い付くわけがないんだしな。
……それに、俺には別の不安があ
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