第73話 長電話は近所迷惑
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おかしくはないんだと覚悟しなければなるまい。
就寝中に腹でもかっさばかれて、「中に誰もいませんよ」なんてされるのかと一度でも勘繰ってしまうと、ちゃんと眠れるのかも怪しくなってくる。いや、それだと屋敷が血で汚れるな。なら絞殺……?
……あ、でも、謝ったら許してくれるかな? なんだかんだで入っちゃったには入っちゃったんだから、そのことは謝った方がいいのかもしれないし。
ふとそんな考えがよぎると同時に、俺は救芽井や矢村の部屋がある方へ振り向き――即座に首を戻す。
――ムリムリムリ! 怖い怖い怖い! そんな地雷原にバレリーナで突っ込むような無謀極まりないマネできるかぁっ!
で、でも、やっちゃったことは謝らないといけないだろうし、身体洗ってくれたお礼も、多分ちゃんと言わないといけないのかもしれないし……ぬがああああッ!
――という感じに俺は今、この先の未来に絶望と焦燥を覚えながら、廊下を歩いている。今は入浴を終えて、就寝前の自由時間なわけだ。
黒のタンクトップに赤い短パンという寝間着姿で歩き回るには、いささか豪勢過ぎる廊下だけどな……。
最初は、自室に戻ってケータイでも弄っていようかと思っていたのだが、久水がいる可能性を考えると、戻るに戻れなかった。つか、なんであいつと一緒の部屋なんだよ……気まずいどころの騒ぎじゃないぞ。
使用人達のヒソヒソ話によると、救芽井と矢村は裏庭で茂さんの制裁にご執心らしいし、二人に部屋のことで相談するタイミングはなさそうだな。したらしたで、なんかめんどくさいことになりそうな気もするけど。
「はぁ〜……ったく、これから一体どうなるんだか――んっ?」
――おや、着信が。なんだか今日はよくケータイが鳴るなぁ。誰からだ?
ポケットから取り出したケータイを開いてみると……あれ、番号だけ表示されてる。てことは、また知らない人から? 伊葉さんは一応登録した筈だし……。
と、とりあえず出てみる……か? 救芽井がケータイを持ってない以上、俺が救芽井家側の連絡係ってことになってるみたいだし。
そういうわけで、俺は恐る恐る通話ボタンを押し――
『龍太君や、元気でやっとるかえ?』
――目を、見開いた。
「なっ、なっ……! その声、まさか……!」
『そう、覚えとるならそのまさかじゃよ。元気そうで、何よりじゃ』
「……ゴロマルさんっ!」
忘れるはずがない。この妙に元気のいい爺さんの声を、俺が忘れるものか!
救芽井稟吾郎丸、通称ゴロマルさん。救芽井のお祖父さんであり、着鎧甲冑の基礎開発に携わっていた人だ。
「技術の解放を望む者達」の件以来だし、まさか、またこうして声が聞けるとは思ってもみなかったな……。
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