第72話 女湯強襲揚陸
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クスキューズミィィィッ!」
「なっ!?」
……だが、俺の尽力も虚しく、彼はとうとう峠を越えてしまった。もはや、覗きどころか強襲揚陸である。
取り返しがつかないほどに前傾していく茂さん。俺がようやく彼が立っていた場所にたどり着いた時には、すでに本人は宙を待っていた。
――くそッ! 諦めて……諦めてたまるかぁぁッ!
俺は自分が落ちる危険も顧みず、両手を彼に向かって伸ばし――その両足を掴むッ!
「よし! あとは回収するだ……けッ!?」
だが、甘かった。
いや、ある程度は予想できていたはずだ。
……茂さんの重さに引きずられ、俺までが落下してしまう展開は。
「うわ、あぁああッ!?」
「むひょひょひょひょ――フンゲェッ!?」
茂さんの体重に両腕を引かれるように、女湯への墜落を開始する俺の体。抗う暇もなく、俺も彼と同類の道を歩もうとしていた。
だが、状況はさらに目まぐるしく変化していく。
女湯に向けて、俺の先を行っていた茂さんの体が、激しい衝撃と共に行き先を反転させたのだ。今度は鼻だけではなく口からも血を噴出しながら、男湯まで吹っ飛ばされている。しかも錐揉みで。
何事かと思い、下の景色に恐る恐る視線を向けてみると――左手で、あるかどうかも疑わしい胸を隠し、右手で拳を突き上げている四郷のあられもない姿が、一番に視界に映り込んだ。あ、眼鏡外した姿は初めて見るなぁ。
――って、まさか四郷がブッ飛ばしたのか? 仮にも俺よりガタイのいい茂さんを?
あんな小さい体の、どこにそんな力が……?
……だが、今はそんなささやかな疑問に悩んでる場合じゃない。
俺の社会的生命までもが、終了しようとしているのだから。
死を免れない状況に立たされた時、人は現実に焦り、怒り、そして最期には諦める、という話を聞いたことがある。
きっと俺は今、その間をすっ飛ばして「諦めて」いるのだろう。
そうでなければ、こんな状況で落ち着いてなどいられない。
死を受け入れたがゆえか、俺は成す術もなく、自然な放物線を描きながら女湯という処刑場に投獄されていった。
ドボン、という重々しい音と共に、俺の視界は美少女達が浸かっていた湯舟に支配されてしまう。衝撃で圧迫された肺から息が吐き出され、幾つもの気泡となって舞い上がっていく。
「悪鬼退散――って、なんで龍太君までぇっ!?」
「きゃあああっ! りゅ、りゅ、龍太まで落ちて来よったぁぁあっ!」
「な、なんで一煉寺までここに来るざますっ!? まさかお兄様と同様にっ……!?」
「……ご愁傷様……」
お湯にダイブした直後だから、周りの女性陣がどんな反応をしてるのかはわからないが……まぁ、ひどく怒ってるか、軽蔑して
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