第70話 安寧なんて、なかった
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――そして、ようやく茂さんは音を上げてくれた。
この決闘のピリオドを、自ら打つかのように。
「……え? 『参った』?」
「と、いうことは……」
その叫びを耳にして、相変わらず呆気に取られていた救芽井と矢村は、更に目を丸くして互いに顔を見合わせる。そして――
「――や、やったああぁ! 龍太君が勝ったあああぁあっ!」
「う、うぇえぇえんっ! 龍太ぁぁぁ! やったぁぁぁっ!」
――呆然状態のギャラリーを完全放置して、ハイテンションな歓声を上げた。矢村に至っては、泣き出してやがる……。
しばらくの間は、歓喜する二人にも反応を示さずにいた久水家の方々だったが、やがてセバスチャンさんがハッとして「ティィィケェェオォォォォッ!」という雄叫びを上げた途端、(これまた四郷以外の)全員が我に返ったようにどよめきの声を上げた。
「そんな、まさか!」
「あの最年少で着鎧甲冑を保有した茂様が、あんな少年に!?」
「すごいですわ! あれが救芽井エレクトロニクスの次期社長の実力……!?」
……オイ。なんかとんでもないデマが広まってんぞ。なんだ次期社長って……。
いや、それよりも。妹の梢様の反応が気掛かりだ。お兄様がやられたせいでブチ切れてるんじゃ……。
「――ふん。あなたにしては、まぁ、多少はよく頑張った方ざますね」
……あるぇ? 意外に……喜んでる?
口調は相変わらず高飛車ではあるが、口元は明らかに緩んでいた。暑いせいか頬もほんのりと赤く、何かにうっとりしてるような表情を浮かべている。
――ああ、なるほど。「救済の超機龍」が、きっと気に入ったんだろうな。
うん、確かにうっとりするのもわかる。この世に二つとない特注品なんだし。
「そ、そんなぁ……梢、お前はワガハイの味方じゃないのかぃ……?」
「……一煉寺さん、多分ひどい勘違いしてる」
――って、なんか四郷さんが養豚場の豚を見るような目で睨んで来るんですけど。茂さんも、着鎧が解けた状態で涙目になりながら、妹に縋り付いてんですけど。
「黙りなさいこのツルッパゲール! いい恥さらしですわ、覚悟なさい!」
「ひ、ひぎぃやぁぁぁあッ!」
――どこから持ってきたのか、鉄バットで兄貴のケツをシバき始めてんですけどぉぉ!?
マジで何なんだこの兄妹! 茂さんがハゲた理由って、まさかこの折檻じゃあ……。
「な、なぁおい、もうその辺で……」
「おぉーっと、忘れるところだったざます。このワタクシを差し置いて、救芽井さんや矢村さんを侍らせていたコト……償ってくださいましィィィ!」
「……って、なんで俺までぇぇぇっ!?」
ま、マズい! なんだか知らないけど、いつの間にか俺もシバかれる空気になってる!
茂さん
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