第70話 安寧なんて、なかった
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。俺に手を捻られたまま。
「あんたは動きが素早いし、戦闘にも慣れてる感じはあった。けど、その手段を電磁警棒に頼りすぎてる。敵を視界から外して、得物を拾うことだけを考えるからこうなるんじゃないか?」
「……き、貴様……どこでこんな戦術を……ッ!」
「俺の兄貴から、だな。攻めることを重点に置かない、あくまでも自衛を優先する護身術だよ」
「――そんな受け身な戦い方に、このワガハイが屈したと言うのか!?」
……受け身、か。まぁ、実際その通りだよなぁ。
そんな手段でなきゃ、基礎体力が一般的な俺で、古我知さんや茂さんに敵うはずがないんだし。
けど――
「――別にいいんじゃない? 『受け身』で」
「なっ……!?」
「受け身だろうが卑怯だろうが、自分の手で自分を『守れる』なら、それで十分だと思うな。俺達は『戦う』ためにコレを着てるんじゃない。着鎧甲冑って、そういうモンでしょ?」
……ってのが、俺のいわゆる「独りよがり」ってヤツ。
――「技術の解放を望む者達」や「呪詛の伝導者」を見てれば、嫌でもわかるさ。能動的に相手を攻める「兵器」が、どんなに恐ろしいモンか。俺自身、どてっ腹に一発ブチ込まれたわけだし。
俺が思うに、あんなことがあっても、着鎧甲冑のバリエーションに「G型」が存在出来たのは、最低限の自衛ができる程度の戦力は必要だったからだろう。「救済の先駆者」が、そうだったように。
「正義なき力は暴力であり、力なき正義は無力」。兄貴の受け売りだが、そんな言葉もある。無力でいないためには、嫌でも力は持たなくちゃいけなかったんだ。
だけど、その理屈にあぐらをかいて「戦う力」を求めてしまったら、結局は「呪詛の伝導者」と何も変わらなくなってしまう。それはきっと、今の茂さんがいい例なんだろう。
甲侍郎さん達が一生懸命考えて、捻り出した「答え」でそんなマネをされちゃあ、そりゃ救芽井だって悲しいさ。
だから俺は、「必要最低限」の「受け身」な戦い方で、着鎧甲冑の理念を守りたい。だって、着鎧甲冑は兵器じゃないんだから。
――何より、俺なんぞをわざわざ信じてくれた、救芽井を泣かせないために、ね。
……そして今は、俺のせいで巻き込まれてなお、俺を応援してくれる矢村のためにもな。
「着鎧甲冑は兵器じゃない。喧嘩の道具でもない。守るためのモンだ。自分や、ほかの誰かを、な」
「ぐ、ぬっ……!」
「……つーわけだから、今回ぐらいは華を持たせてもらうよ? ――茂さんッ!」
「ひっ、ぎゃああああああッ! ま、ま、参った、ァァ……ァァァ……!」
未だに諦めず睨みつけて来る茂さんに対し、俺は捩る力を強めた。骨が軋む音に並行するかのように、彼の悲鳴がアリーナ中に響き渡る。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ