第69話 俺は青春が少ない
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わけだ、俺。
そんな俺を「どう鍛えるつもりなのか」は、上述のように何度も当の兄貴に聞かされてきた。だが、「なぜ鍛えなければならないか」は、全く教えてはくれなかった。
――そして、その答えに自力でたどり着いた頃には、既に高校二年への進級が目前に迫っていた。
春休みが終われば、俺は高二に進級し、兄貴は大学を卒業してエロゲー会社へ入るために、家を離れることになる。
その時が来る数日前の夜、俺は自室のベッドの上で、ふと目を覚ました。
「ん……」
身体に取り付いていた睡魔が剥がれ落ち、瞼が自然と持ち上がっていく。
別に嫌な夢を見たわけでも、トイレに行きたくなったわけでもないのに、いつの間にか俺の目は冴えていた。
「なんだ……まだ五時かよ」
ベッドに置かれていた目覚まし時計の針が目に入った途端、鏡を見なくてもわかるくらい、げんなりした表情になってしまう。
こんな中途半端な時間に、たいした訳もなく目を覚ましてしまった。明日……というより日が昇れば、また地獄の修練がお待ちかねだというのに。
二度寝するにも微妙だし、起きたら夜がしんどいし。どっちに転んでもろくな展開が予想できない。
「ハァ……俺が成長してない罰ってとこかぁ? 全く神様も手厳しい――ん?」
そんな「睡眠」という生存機能にまで悩まされてる自分の脆さに辟易し、ため息をついた時。
下から――何かが聞こえた。
「……?」
身体の動きを止めて物音を消し、自分の鼓動を除く、ほとんどの音を静止させた。そして聞き耳を立てると――「何か」の実態が、少しだけ掴めた。
……話し声? こんな、太陽もさほど自己主張してないような早朝に?
そう。音の正体は、紛れもなく会話を交わしている「声」だった。
天然の物音にしては、音の律動が不自然過ぎる。それによく聞いてみれば、あれは兄貴の声だ。
――兄貴が誰かと話している?
話し声は兄貴のものしか聞き取れない。だが、もう一つを聞き逃しかねないほどの難聴でもない。多分、電話で話してるからなんだろうな。
盗み聞きなんて良くないし、もう二度寝しちまおう……という考えもあるにはあったが、個人的には会話の内容は気になって仕方がなかった。
――ま、まぁ、家族間で電話してるところを、見られたり聞かれたりなんて当たり前だし、別にいいでしょ! と、勝手な解釈を済ませると、俺はそろりと部屋から出る。
そこからすぐのところにある階段からは、よりハッキリと話し声が聞こえてきた。「何の話をしてるのか」まではわかりかねるが、声色からしてマジメな話をしてることは間違いないらしい。
……会社の人とエロゲー制作について話してんのかな? 確かに奴なら、その手の話題にマジに
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