第69話 俺は青春が少ない
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具も付けずにいきなり――がふッ!」
多分、その時が初めてだっただろう。
兄貴の蹴りをモロに食らい、一発でのされてしまったのは。
それで今まで受けていたのが全て、「俺のために手加減したもの」だったという事実を、改めて突き付けられてしまったようだった。
……まぁ、戦闘ロボットを素手で叩き壊せる超人に、本気で蹴られたりなんかしたら、一瞬でスクラップなんですけどね。
それ以降、俺はわけがわからないまま、毎晩「特訓」に付き合わされるハメになっていた。
白帯と黒帯が、防具すら付けないままでガチンコ勝負。結果なんて見えている。
そうして豹変したわけも特訓をする意味も、まるで理解できず、を尋ねてみても「今は修練に専念しろ」の一点張り。私生活上でも、口を開けば特訓の話ばかりだった。
……まぁ、今までが今までだから、何か考えがあってのことなのかも知れない。
が、それでも「どうしてこうなった」と思わないわけではなかった。
なぜ今になって、こんなドギツイ「特訓」とやらに身を投じなければならないのか。その意味を考えようとしても、自力で答えが出ることはない。
……もしかしたら「技術の解放を望む者達」の一件に関係したことなんだろうか? まぁ、そう聞いても答えが返って来るとは思えないが。
そして、夜の道場にて相対している中、兄貴が持ち出してきた持論はこうだ。
「お前は体力はないが、技の精度には優れている。むやみに短所を補おうとして中途半端になるよりは、より長所を伸ばして一芸に秀でた拳士になる方がいい」
「それで、この特訓、か……!?」
「そうだ。お前が一度でも俺を投げるか、一発突き蹴りを入れられれば、特訓は即終了。出来なければ、俺が大学を卒業するまで延々と続くことになる」
……そう。その特訓が、丸々一年続いたわけだ。後はわかるな?
いくら技術があったとしても、所詮体力は一般ピープル。技は達人、パワーは人外レベルの鉄人に、どう勝てと。
どんな角度や間合いから突き蹴りを放っても、受け流され反撃を食らい、どんな素早さで投げ技を仕掛けても、実にアッサリと切り返されてしまう。
打撃戦に持ち込めば十秒も経たないうちに沈められ、投げ技や固め技に出た時は、いつの間にか俺が宙を舞っていた。
結局、俺は高校一年という青春の一ページを、兄貴との修練だけでほとんど使い潰してしまった。
体中のアザを学校で矢村に見られた時は、「自転車で転んだだけ」とごまかすのに必死だったしな……。彼女に相談して、励ましてもらおうって考えもなくはなかったが、兄弟間の話に女の子を巻き込むのも、ねぇ?
夏休みや冬休みも、兄貴との修練に掛かりっきりで、彼女の相手もそれほど出来なかったし……あぁ、道理で友達できない
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