第68話 紅白戦開幕
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屋敷の裏手には、庭園に包まれた広大なヘリポートがあり、その手前にはアスファルトの広場がある。
五十メートル四方に広がったこのスペースは、元々ヘリで運んできた物質を置いておく「荷物置き場」としての役割があったらしい。俺をそこまで案内してくれた一人のメイドが、丁寧に教えてくれた。
「茂様と梢様のご両親は今、療養のため京都にご隠居されております。本家もそこにあるのですが、お二方はこの辺りに長期滞在したいと言って聞かないのです」
「妹の方はともかくとして……お兄様方の理由は簡単に察しがつくな」
決闘場まで連れてってくれた後も、メイドはいろいろと久水家についての情報をくれた。……茂さんとしては、ただ救芽井に会いたかったから、この町に近付こうとしたってとこなんだろうなぁ……。
メイドによると、この屋敷のデザインも茂さんの趣味によるものらしい。別荘とは言え、「趣味」の感覚で家を建てられる久水家の財力を前にしても、大して驚きがないのは、多分……いや、間違いなく救芽井のせいだろう。
その救芽井といえば、今は俺の後ろで矢村と一緒についてきている。
「茂さん、私の前で龍太君に随分なこと言うじゃない……。後で覚えてなさいよ」
「龍太がアタシのために、あんなに……。ふらぐって言うんちゃう? これっ!」
――何やら物騒なコトを呟きながら。言ってることのヤバさなら、矢村様も負けてはおられぬようですが。
「ところで一煉寺。あなた勝算はありますの? お兄様は財力のみに依存せず、着鎧甲冑を使った格闘技術の強さを以って、『救済の龍勇者』の資格を勝ち取った猛者ですのよ」
「……救芽井さんや一煉寺さんを除けば、着鎧甲冑の所有者としては最年少……」
ただ事ではないオーラを放っている、後ろの方をチラ見している間に、今度は前に立っている久水と四郷が声を掛けて来た。どうやら、茂さんも茂さんで、結構な実力派らしい?
「勝算なんてあるわけないだろ。ほとんど初対面なんだから、計算のしようがないって」
「あらあら、あんな啖呵を切った割には、随分と弱気ですこと」
「目測が立たないってだけだよ。簡単に負けるつもりはない」
「……そう、ざますか」
――そう。俺は茂さんがどれほどの強さなのかは知らない。こっちが非売品の特注モノで臨める分、俺の方が有利ではあるかも知れないが、それでも必ず勝てる保証にはならない。
もし向こうが古我知さんを遥かに超える実力だったなら、恐らくただでは済まなくなるだろう。だからといって、怖じけづくわけにもいかない。
事実、今しがた久水が言ったように、俺はおもいっきし啖呵を切ってしまった。ここまで来たからには、最後まで抵抗しまくる他あるまい。
「ついに来たな、一煉寺龍太。覚悟が出来たなら、ここへ来いッ!
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