第68話 紅白戦開幕
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――案の定、悲しげな顔をしている。
兵器ではないのに。あくまでも、人を守るためなのに。
「技術の解放を望む者達」のような、完全な兵器化を回避するために、やっとの思いで生み出されたはずの「G型」なのに。
それは今、「兵器」と見做されかけている。「G型」が誕生した経緯も、公表されているというのに。
よりによって、自分に相応しいと豪語している人間にそんなことを言われてしまったのが、哀しくてしょうがない、という顔だったのだ。
そんな彼女の表情を見た時。
俺は懐かしいような、もどかしいような感覚を覚える。
――いや、「思い出す」という方が的確だな。
「怒り」と形容するべき心の流動が、全て体の芯に納められ、頭の中だけがスーッと冷え切っている。脳みその中だけは静かなのに、体全体は焼けるように熱い。
それと同時に、頭の中でぐるぐると回っていた考え事が、「胃の消化を待つ」ことから「茂さんをぶちのめす」ことへと、一瞬で切り替わってしまった。まるで、スイッチがオンになるように。
これは……俺の知ってる感覚だ。
あの冬休みの時、喫茶店に押し入った強盗が、救芽井の胸に触った時。俺は、冷めた頭と熱い体が同居している状態で、彼らと戦った。
……また、ああなろうとしてるんだな。厄介な性分だよ、全く。
おかげで――
「貴様ァァ! ワガハイを嘗め――ガハァッ!?」
――気持ち悪くてしょうがないのに、一発ブチ込んじゃったじゃないか。うげー。
「……ったくよぉ。そんなに『怒らせる』のが上手いなら、資産家なんて辞めてマタドールにでもなったらどうだ?」
本能に行動を任せた結果、俺は電磁警棒を振り上げて、突進してきた茂さんの水月に、腰の入った突きを入れていた。
予想外の反撃を、よりによって急所に叩き込まれてしまった茂さんは、俺より吐きそうなうめき声を上げて、うずくまってしまう。
その一瞬の反撃に、周囲からは驚きの声が上がる。久水やメイド達だけではなく、救芽井と矢村も随分たまげているようだった。
……四郷だけ、相変わらずの無反応だけど。
「えっ……!? 龍太君の突き、あんなに速かったかしら……!?」
「い、一煉寺!? あなた一体……!?」
――そこまで驚くか? 普通。
ま、俺も救芽井がいなかった間の高校一年間、遊んでたわけじゃなかったからな。
今思えば……この時のためにあったのかも知れない。去年の――兄貴との修練は。
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