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フルメタル・アクションヒーローズ
第68話 紅白戦開幕
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と肯定しようとした時。俺のハラワタに詰まりきった食物が、悲鳴を上げた。

「……ふふん、強がってはいても、やはり体は正直だったようだな」
「――うえっぷ。そこだけ切り取ったら、なんかエロ同人みたいだな」
「ほざけハレンチ庶民がッ!」

 ある程度は予想されていた「胃もたれ」に思わず片膝をついた俺だが、相手のペースに飲まれないために敢えて軽口を叩く。
 そんな態度が気に食わなかったらしく、茂さんは声を荒げて襲い掛かってきた。やめて! 俺に乱暴する気でしょう? エロ同人みたいにっ!

 ――などとふざけていられる分、俺にはまだ余裕があるらしい。俺は吐き気と戦いながら、電磁警棒を持つ手首を払って攻撃をいなし、間合いを取った。

「うえ、気持ちわりぃ……。やっぱ食後って運動するもんじゃねぇなぁ……」
「ならばさっさと降参するがいい!」

 戦う前から大量のメシを盛る、という姑息な手段について、救芽井や矢村からヤジを飛ばされているせいか、茂さんもかなりムカムカしてるらしい。逆恨みもいいとこだけど。
 弓のように引き絞られた肘から、真っ直ぐに突き出される電磁警棒の先端を水平にかわし、俺は再び距離をとった。今の状態で反撃なんかしたら、反動で戻しかねない……。しばらくは逃げ回って、消化を待つしかないだろう。

「貴様……なぜ電磁警棒を使わない? その腰にある武器は、何のためにある?」
「使う気がないからさ。『チャンバラごっこ』は俺の趣味じゃないからね」
「なんだと……!」
「それでも腰に提げてるのは、まぁ俗に言うハンデって奴だ。使いもしないアイテムをぶら下げて戦えば、多少はあんたにとって有利だろ? うぷっ」

 コンディションを崩して弱らせているはずなのに、攻撃が当たらないことに苛立ちを隠せずにいる茂さんに対し、俺はさらに煽るようなことを口にする。

 ――まぁ、言ってることは事実だ。あくまで「兵器」として扱わず、人を「守る」ためだけに作り出された着鎧甲冑の装備を、得意げに「武器」と言い切ってしまうような輩の前で、同じ手段を使う気にはなれない。そもそも、俺は彼ほど電磁警棒みたいなアイテムには慣れちゃいないしな。

 ……それでも茂さんがめちゃくちゃに強かったなら、使いもしない電磁警棒なんて捨てて、身軽になる作戦も検討できた。
 だが、さっきまでの動きを見ていればわかる。彼の攻撃は――読みやすい。それこそ、腹痛でろくに動けない俺でも、見切りさえすればかわせるくらいに。
 彼はスピード自体は相当なものだが、無駄なモーションが多過ぎる。カウンター専門の俺からすれば、避けてくださいと言っているようなものだ。

 そして、さっきの茂さんの言い草で、救芽井がどんな感情を抱いたかが気になった俺は、チラリと彼女の方を見遣った。

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