第67話 ムカムカしたら即決闘
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がら、ゆっくりと席を立つ。ようやく当事者が口を開いたためか、全員の注目が俺に集まった。
「何をバカなことを。言葉通りの意味に決まっている」
「……じゃあ『君達』ってことは、俺一人を指したわけじゃないんだな?」
「ふん、日本語も通じないのか? もはや猿の領域だな」
「そっか。――よくわかった」
茂さんの罵声を軽くスルーして、俺は矢村の方を見る。
自分の思慮のなさを悔いている……という感じだろうか。やるせない表情で唇を噛み締めながら、申し訳なさそうに上目遣いでこちらを見つめていた。
俺は「気にすんなよ」という気持ちを、苦笑いと一緒に目線で伝えると、改めて茂さんと向き合った。
俺一人が罵られたわけじゃない。俺と一緒にいたばっかりに、何の罪もない矢村までがバカにされてしまった。
救芽井と関わった以上、俺が火の粉を被るのはやむを得まい。だが、矢村がそれに付き合う道理なんて、ないはずだ。
……これじゃ、あの時と何も変わらない。
なら、どうする? これ以上、矢村を傷つけないためには。
――いや、答えなんて考えるまでもない。問題は、それを今の俺が為せるかどうか、だ。
「……ありがとな」
「なに?」
「あんたのおかげで……暴れる理由が出来そうだ」
――茂さんを倒すことで、矢村の言い分が間違いではないことを証明する。それ以外に、彼女の名誉を取り戻す方法はない。
死ぬほど満腹の状態で戦うなんてしんどいし、着鎧甲冑の在り方に背く喧嘩なんて、やってられるかって心境だったが……おかげさまで、やる気が沸いてしまったらしい。
……ま、そんなのほとんど口実だけどね。本音を言うなら、単に矢村をバカにされた途端、ムカムカしてきたってだけの話だ。
経緯はどうあれ、今の俺は救芽井エレクトロニクスの「救済の超機龍」であることには違いない。そうであるからには、相応の責任が生まれてしまう。
すっかり、俺はそいつを失念していたらしい。それで傷つくのは俺だけでは済まないというのに。
「二十分もいらん、時間の無駄だ。今すぐにでも始めよう」
「ちょっと龍太君!? なに言い出すのよ、そんな状態でいきなり戦うなんて!」
「りゅ、龍太ぁ!?」
隣の二人がやたらとあわてふためいているが、構っている暇はない。俺は決して目を離さないよう、茂さんの眼を見据えた。
「……いい心掛けだ。屋敷の裏手に、ヘリポートがあるのは知っているな? そこの手前にある広場を、決闘場とする。すぐに準備しろ」
「あぁ。待たせるつもりはない」
俺達二人はそれだけのやり取りを交わすと、「腕輪型着鎧装置」をしっかりと手首に装着し、裏手へと向かう。この時、茂さんの身支度が仕事なのか、彼の周りをメイド達が囲っていた。く
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