第67話 ムカムカしたら即決闘
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「……ふん。こんな男に手加減など無用だ。聞けばこの一煉寺龍太とやら、ただの中流家庭の人間のようではないか。そんなどこの馬の骨とも知れない男が、世界に、そしてワガハイに愛されるべき樋稟の隣に立つなど、言語道断!」
――だが、当の茂さんの返事はにべもない。ついに彼の本音が噴き出して来たようだった。
言ってることは割と正しいとは思うが、なんかいけ好かない言い方なんだよなぁ……。この人、口ぶりのせいで微妙に人生損してる気がする。
「一煉寺龍太。貴様は何の地位も名誉も持たない凡人でありながら、誰よりも麗しく、気高い樋稟を汚した。ゆえに、今こそワガハイが断罪するのだ!」
ビシィッ! とこちらを指差す彼は、さながら正義の味方のような口上で、俺の成敗を宣言する。そんな兄を見たせいか、久水はショックを受けたかのように、再び俯いてしまった。
……汚した? あぁ、裸を見たことか。あれは確かに悪いことしたかなぁ……。
「……さっきから黙って聞いてれば、ヌケヌケと言いたいことを言ってくれるじゃない! あなたが龍太君の何を知ってるっていうの!?」
「そうやそうや! あんたこそ、龍太を腹一杯にして動けんようにせんと、勝負しようともせん卑怯者やろがッ!」
だが、罵倒されていたはずの当人をガン無視して、逆に褒めたたえられていたはずの救芽井が反論を始めた。それに続いて、矢村も席から立ち上がって声を荒げる。
「……なんだと?」
その時、茂さんの眉が鋭く吊り上がる。
しばらくは例にならって聞き流しているようだった彼だが、矢村の発言だけは看過しなかったらしい。異論は許さぬ、という強い眼差しを彼女に向け、重々しく口を開いた。
「君はまるでわかっていないのだな。樋稟は今や、世界的にその名を知られたアイドル。そして、『より多くの人命を救う』という崇高なる使命を帯びた、特別な女性なのだ。そこにいるような、薄汚れた庶民が触れていい人ではないのだよ」
「なっ……何が言いたいんや!」
「住む世界が違う、ということさ。君達のような小汚い田舎者が、彼女の隣にいるというだけで、ワガハイははらわたが煮え繰り返る思いなんだよ。だからこそ、その排除のためならば容赦はしない。樋稟には、より相応しい世界に生きてもらわなくてはならないからね。それが、彼女の幸せにもなる」
高らかな口調で、茂さんは威圧するように矢村を説き伏せようとする。言い返せない部分もあったのか、彼女はそこから先は何も言えず、唇を噛み締めていた。
……幸せ、ねぇ。なんで救芽井にとっての幸せが、茂さんにわかるんだかな。
――いや。それよりもずっと、引っ掛かることがある。
「『君達』のような小汚い田舎者ってのは……どういう意味だ?」
俺は腹をさすりな
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