第66話 叶わぬ恋は、真夏に溶けて
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
を励まそうと、敢えて能天気に振る舞った。くよくよしてるのがバカらしくなるように、と。
そんな俺を見ていた久水は、やがて水を得た魚のように、俺を弄りはじめる。そして、その時にようやく、彼女は以前のような笑顔を見せていたのだ。
「きゃはは、りゅーたん、ほんとにおバカ! なんでそんなにおバカなの?」
「こずちゃんがだいすきだからだよ」
「えっ……? だ、だめ! わたくちたち、まだこどもだもん! おとなにならないと、けっこんできないもん!」
……我ながら、結構とんでもないことを口走っていたもんだ。まぁ、向こうも子供ゆえか、割と単純に喜んでる節が垣間見えてたから、それは良しとするか。
ちょっとわがままで活発で、意外に恥ずかしがり屋で。そんな彼女と一緒にいる時の俺は、堪らなく幸せだった。
――だが、そんな時間すらも長くは続かなかった。
彼女の面持ちが微妙に暗くなりはじめた日から、二週間ほど経った頃。
いつも来ていた河川敷には、彼女はもう……いなくなっていた。
「こずちゃん? どこ?」
辺りを見渡し、名前を呼んでも返事はない。涙目になりながら、初めて出会った茂みを捜しても、姿はない。
――とうとう、自分と遊ぶことに飽きてしまったのか。
そんな考えがふと過ぎり、気がつけば、俺は独りでむせび泣いていた。
そして、そのままたった独りで夕暮れを迎えた後、俺はとぼとぼと帰路についていた。
一日彼女に会えなかったというだけで、俺の胸にはぽっかりと穴が空いてしまったのだ。えもいわれぬ寂しさを肌で感じつつ、俺はぼんやりとした気持ちで町を歩いていた。
――その道中、近場のガソリンスタンドを通り掛かった時。
「……あっ!?」
そこに停まっていた白塗りの長い車……即ち「リムジン」の窓に、あの姿を見たのだ。
「……!」
何かを考える前に、俺は走り出していた。そして気がついた時には、俺は車窓の奥にいる彼女へ手を伸ばしていたのだ。
「こずちゃん!? こずちゃん!」
「えっ……りゅーたん?」
向こうは驚いたように目を見開くと、慌てて窓を開いてこっちを覗き込んできた。湖のように澄んだ丸い瞳が、俺の視界に煌々と映り込んでいた光景は、今でも鮮明に焼き付いている。
「こずちゃん、どこいくの?」
「……とおく。うんと、とおく」
「とおく? もう、会えないの?」
泣きそうな顔で訪ねる俺を見た彼女は、どうすればいいかわからない、という様子で俯いていた。
「梢、もう行きますよ。あら、お友達?」
その時、彼女の母親らしき人が車の陰から顔を出して来る。その傍にいた初老の男性は、恐らく父親だったのだろう。
「茂も、片付けで疲れて眠っておるし、早
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ